子宮内膜受容能(ERpeak)検査による個別化胚移植は生殖医療結果を改善する(論文紹介)

反復着床不全患者に対して、ERA検査と異なる子宮内膜受容性検査である ERPeak検査(48の遺伝子をRT-qPCRで解析)を用いた個別化胚移植でも臨床成績が改善するかどうかを検討した論文をご紹介いたします。

≪ポイント≫

反復着床不全女性に対して子宮内膜受容性検査である ERPeak検査を用いた個別化胚移植は女性年齢に関わらず、生殖医療成績改善に寄与しました。内膜需要能検査は症例を選べば有用な検査・治療である可能性が考えられます。

≪論文紹介≫

Yasuhiro Ohara,et al. DOI:10.1002/rmb2.12444

2019年4月から2020年6月までの生殖医療2施設における反復着床不全女性をレトロスペクティブ研究です。介入群(n=244)は子宮内膜受容能検査結果に応じて個別化胚移植を実施、検査非実施女性は標準的な時期に胚移植を実施(n=306)し、これらを個別化胚移植群、コントロール群として比較検討しました。傾向スコアマッチング解析では、臨床妊娠率と生児獲得率を評価項目とし、女性年齢(38歳をカットオフ)としサブグループ解析を実施しました。
結果:
個別化胚移植群の臨床妊娠率と生児獲得率はコントロール群に比べ高くなりました(臨床妊娠率: 37.7% vs. 20.0%, aOR: 2.64; 95%CI, 1.70-4.11, p < 0.001, 生児獲得率:  29.9% vs. 9.7%, aOR.4.13;95%CI, 2.40-7.13, p < 0.001)。サブグループ解析では女性年齢が高齢でも若年でも個別化胚移植群の臨床妊娠率と生児獲得率はコントロール群に比べ高くなりました。

≪私見≫

反復着床不全患者では、女性年齢(38歳をカットオフ)に問わずERPeak検査で検査を行うと、40%前後で着床の窓がずれていました。ERPeak検査では、ERA検査に比べて後ろにずれる(つまり黄体補充をしていから早く戻すように指示される)パターンが多くなっています。ERPeak検査とERA検査で見ている遺伝子が異なるかもしれませんし、当研究で内膜生検を実施した黄体補充(ウトロゲスタン800mg/日+ルトラール6mg/日+プロゲステロンデポ125日3日に1回)量が比較的高用量である点、黄体補充後113時間で実施していてERA検査推奨の120時間より早かった点なども着床の窓の割合が異なった理由のひとつかもしれませんね。高年齢群が若年齢群に比べて後ろにずれる(黄体補充をしていから遅く戻すように指示される)パターンが多くなっているのも印象的な所見といえます。

文責:川井清考(院長)

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