凍結融解胚移植の黄体補充はいつまでが無難?
ホルモン補充周期凍結融解胚移植は妊娠黄体がないため、内因性のプロゲステロン分泌は絨毛組織からの分泌が十分になるまで外因性に投与する必要があります。施設間により妊娠8-10週とばらつきがありますが、理由としてはluteal placental shift(絨毛組織から十分なプロゲステロンが分泌される妊娠週数)が症例により異なるとされているからです。
絨毛組織からプロゲステロンが出始める時期を示した報告のブログは過去にも取り上げていますが、一定量のプロゲステロン分泌に至る妊娠週数の症例ごとの割合を示した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
実際のluteal placental shiftは妊娠7週頃に起こることが考えられます。ホルモン補充周期凍結融解胚移植後妊娠した女性は、少なくとも妊娠7週までエストラジオール補充、少なくとも妊娠8-9週までプロゲステロン補充を続けるべきであると考えられます。
2013年12月から2016年12月にホルモン補充周期凍結融解胚移植後に妊娠した女性262名を対象とし、luteal placental shiftをモニターしたレトロスペクティブチャートレビューです。全症例P+5に胚盤胞凍結融解胚移植と実施し、9日後(妊娠4週0日)にhCG値を実施。血清エストラジオール値とプロゲステロン値を毎週モニターし、血清値に基づきホルモン補充(プロゲステロンは腟剤補充)を中止するまでモニタリングしました。luteal placental shiftが起こったことを示すプロゲステロン値が15ng/mL以上となった患者の割合を、妊娠週数ごとに評価しました。
結果:
妊娠6週から7週にかけて血清プロゲステロン値は有意に上昇し、妊娠7週までに80%の女性が血清プロゲステロン値を15ng/mL以上に上昇しました。妊娠10週までに全例で血清プロゲステロンが15ng/mL以上となりました。血清エストラジオール値も同様に妊娠6週から7週にかけて有意に上昇しました。
血清プロゲステロン値15ng/mL以上の割合(%) | 平均血清エストラジール値(pg/mL) | |
妊娠4週 | 40% | 381.8 |
妊娠5週 | 47% | 461.6 |
妊娠6週 | 56% | 614.7 |
妊娠7週 | 80% | 918.5 |
妊娠8週 | 91% | 1075.8 |
妊娠9週 | 97% | 1200.7 |
妊娠10週 | 100% | 1331.0 |
~関連ブログもご参照ください~
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文責:川井清考(院長)
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