絨毛組織からE2/P4ホルモンがではじめるのはいつ?(その2:論文紹介)

絨毛組織からE2/P4ホルモンがではじめるのはいつ?でご紹介した報告では、ベースにプロゲステロン注射を使用しており、その基礎値と比較して増加分が絨毛組織から血清プロゲステロン分泌と定義していました。今回ご紹介する報告は、ジドロゲステロン(デュファストン®︎)でホルモン補充を行なっているので、通常の血清プロゲステロン測定では数値は反映されません。つまり、絨毛組織から血清プロゲステロン分泌がそのまま採血に反映されています。

ポイント:
絨毛組織からプロゲステロンの実質的な産生の開始は妊娠7週目である。プロゲステロンの増加は非線形となりました。ホルモン補充周期凍結融解胚移植の単胎妊娠で、血清プロゲステロン値 10ng/mLを超えてくるのは胚移植後44~50日目(妊娠9w0d-9w6d相当)のようです。

≪論文紹介≫

Kay Neumann, et al. Reprod Biomed Online. 2020 May;40(5):743-751.  doi: 10.1016/j.rbmo.2020.01.019.

ホルモン補充周期下凍結融解胚盤胞移植周期による妊娠(n = 88)の血清プロゲステロン値の前向き研究です。プロゲステロンと免疫測定法および分光測定法で交差反応を示さないジドロゲステロンを黄体期および妊娠初期のサポートに使用しました。
プロゲステロン、エストラジオール、hCGは妊娠成立前から胚移植後+65~71日まで定期的に測定しました。
結果:
血清プロゲステロン値は、胚移植後9~15日目(4w0d-4w6d相当)ではベースラインにとどまり、胚移植後16~22日目(5w0d-5w6d相当)までは単胎・双胎に関係なく、わずかに上昇しました。胚移植後23〜29日目(6w0d-6w6d相当)までは、血清プロゲステロンは1.0ng/ml以上で非線形に増加し、妊娠第1期を通じて更に増加し続けました。血清エストラジオール値は血清プロゲステロン値と並行して増加し、血清hCG値は胚移植後37~43日(8w0d-8w6d相当)にプラトーになりました。プロゲステロン値は胚移植後23〜29日目(6w0d-6w6d相当)以降、妊娠継続の有意な予測因子であり、胚移植後37~43日(8w0d-8w6d相当)以降で最も精度が高くなりました(ROC 0.98;95%CI 0.94~1;P = 0.0009)。
結論:
プロゲステロンの実質的な産生の開始は妊娠7週目となります。プロゲステロンの増加は非線形であり,絨毛性と接合性に依存し,凍結胚移植周期に由来する妊娠の転帰を予測する可能性があります。

≪私見≫

この報告では、二卵性双胎妊娠は単胎妊娠に比べて血清プロゲステロンレベルが高いものの2倍になっていません。さらに、二卵性品胎妊娠は二卵性双胎妊娠に比べ血清プロゲステロン値の上昇を示しました。これらの結果から胎児と性ステロイド産生のオートクライン制御が存在することが示唆されます。ホルモン補充周期凍結融解胚移植の単胎妊娠で、血清プロゲステロン値 10ng/mLを超えてくるのは胚移植後44~50日目(妊娠9w0d-9w6d相当)のようですが、双胎妊娠では胚移植後37~43日目(妊娠8w0d-8w6d相当)ですから黄体補充について単胎妊娠と双胎妊娠で少し変えてもいいのかもしれませんね。

文責:川井清考(院長)

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