絨毛組織からE2/P4ホルモンがではじめるのはいつ?(論文紹介)

着床が起こると、絨毛組織がhCGを産生し、これが黄体を刺激してさらにE2およびPを産生します。妊娠7-8週頃に胎盤が十分なE2とPを産生するようになり、luteo-placental shiftと呼ばれます。では、大体いつくらいから絨毛組織からのホルモン産生が起こっているのでしょうか?

≪ポイント≫

絨毛組織からエストラジオールは妊娠5週台から、プロゲステロンは妊娠6週後半からホルモン産生が出始めるようです。急激にホルモン産生が起こるというより直線的な上昇であることがわかります。

≪論文紹介≫

Robert Setton, et al. J Assist Reprod Genet. 2021 Feb;38(2):413-419. doi: 10.1007/s10815-020-02049-1.

ホルモン補充周期で単一胚移植を行い、単胎妊娠となり生児をえた症例を対象に着床後初期のエストラジオール(E2)とプロゲステロン(P4)が絨毛細胞よりどの段階から産生されるかを確認することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。
ホルモン補充療法のベースはエストラジオールパッチとプロゲステロン筋肉注射で行いました。E2とP4の連続測定は、28日目/4w0d相当から60日目/8w4d 相当までの中央値で算出しました。
結果 2013年4月から2019年4月までの自己卵子を用いた569周期とドナー卵子を用いた127周期の計696周期を対象としました。血清E2およびP4値は、徐々に上昇し始めました。ベースラインの28日目/4w0d相当の血清E2(415 pg/mL)と比較して、36日目/5w1d相当から542 pg/mL(P<0.001)と上昇を認めました。ベースラインの28日目/4w0d相当の血清P4(28.1ng/mL)に関して、48日目/6w6d相当から、血清P4は31.6ng/mLと上昇を認めました(P < 0.001)。

≪私見≫

Csapoは、妊娠8週以降に黄体摘出は妊娠継続するが、妊娠7週以前の黄体摘出は流産となることを報告しています。そのほかにも、Devroeyらが17名の卵巣機能不全女性での連続測定の研究で、luteo-placental shiftが妊娠7週以前(双胎では妊娠5週)におこることを、同様にScottらも9名の卵巣機能不全女性での研究でE2値とP値は妊娠5週台から始まり、それぞれ妊娠6週と7週に有意に上昇することを報告しています。

文責:川井清考(院長)

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