正常胚獲得に必要な成熟卵子数(Fertil Steril. 2024)

子宮に器質的異常がない限り、反復着床不全の原因のほとんどは胚異数性とされています。また、どのような患者にPGT-Aを実施するかなどの検討が進んでいます。
反復着床不全のほとんどの原因は受精卵?(論文紹介)
胚因子以外の反復着床不全は極めて稀(Hum Reprod. 2024)
PGT-A(着床前検査)ASRM committee opinion 2024
正常核型胚移植に胚盤胞グレードは関係する?(Reprod Med Biol. 2024)
正常核型胚盤胞を得るために必要な最低MII数の予測値を検討した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

正常核型胚盤胞を少なくとも一つ獲得できるMII卵子数を年齢別に予測するモデルは比較的高い精度を認めました。

≪論文紹介≫

Cristina Rodríguez-Varela, et al. Fertil Steril. 2024 Oct;122(4):658-666. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.06.002.

女性年齢に応じて、少なくとも1個の正常核型胚盤胞を獲得するために必要なMII卵子の最小数を推定するための有用なツールを見つけることを目的としました。IVIRMAバレンシア(スペイン)で2017年1月~2022年3月の5年間に実施された異数体に対するPGT-A周期のレトロスペクティブ解析です。初回PGT-A周期で、少なくとも1個のMII卵子が得られた患者を対象としました。自己卵子を用いた女性からの治療周期は、卵子年齢が35歳以上の場合のみ選択しました。PGT-Aは5日目または6日目にTE生検にて実施されました。主要評価項目は女性年齢に応じた少なくとも1個の正常核型胚盤胞を獲得するために必要なMII卵子数としました。
結果:
合計2,660例(患者群=2,462例、ドナー群=198例)のPGT-A周期が実施されました。1個の正常核型胚盤胞を得るのに必要なMII卵子の最小平均数は年齢とともに増加し、少なくとも1個の正常核型胚盤胞を得られなかった治療周期数も増加しました。患者群の80%を用いて、調整多変量バイナリ回帰モデルをデザインしました。このモデルを用いて、少なくとも1個の正常核型胚盤胞が得られる確率のカリキュレーターを作成しました。残りの20%の患者群でこのモデルを検証したところ、72.0%の精度で、少なくとも1個の正常核型胚盤胞を有する事象を推定できることが示されました。

≪私見≫

1個の正常核型胚盤胞を得るのに必要なMII卵子の最小平均数ということもあり、MII卵子数から生検できる胚盤胞割合が高いなと思いデータを眺めていました。
表を作成しましたので参考にされてみてください。

  最小MII卵数
/1正常胚
最小MII卵数
/1正常胚
最小MII卵数
/1 生検
最小MII卵数
/1 生検
18-34歳 4.3 3.9-4.7 2.6 2.5-2.8
35歳 4.9 4.2-5.8 2.8 2.4-3.2
36歳 5.9 5.0-7.1 3.0 2.6-3.4
37歳 5.8 5.0-6.9 2.9 2.6-3.2
38歳 6.2 5.5-7.2 2.8 2.6-3.0
39歳 7.8 6.9-8.9 2.9 2.7-3.2
40歳 12.2 10.5-14.6 3.3 3.0-3.6
41歳 14.8 12.4-18.3 3.5 3.2-3.8
42歳 22.8 18.0-31.1 3.7 3.4-4.2
43歳 39.7 27.3-72.5 4.6 3.9-5.6
44歳 22.8 12.3-154.8 5.7 4.4-8.3
45-歳     11.3 8.1-19.0

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文責:川井清考(院長)

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