胚因子以外の反復着床不全は極めて稀(Hum Reprod. 2024)

胚移植をして着床しない患者の原因は、胚か?子宮側か?主義の胚移植手技の限界か?という議論は、永遠に続きます。正常核型胚を3回移植したら累積臨床妊娠率は95.2%、累積出生率は92.6という論文を以前ご紹介いたしました。
反復着床不全のほとんどの原因は受精卵?(論文紹介)

Paul Pirtea, et al. Fertil Steril. 2020. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2020.07.002
こちらの報告の続報です。

≪ポイント≫

器質的な異常をのぞいた後の話ではありますが。「真の」原因不明反復着床不全率は、体外受精集団において5%未満、もしかすると2%未満かもしれません。

≪論文紹介≫

Pavan Gill, et al. Hum Reprod. 2024 May 2;39(5):974-980. doi: 10.1093/humrep/deae040.

25クリニックの多施設共同研究です。2012年1月から2022年12月までで123,987名64,572周期の正常核型胚盤胞移植を対象としました。対象として、他クリニックでの胚移植歴、ドナー卵子、未治療の子宮腔内病変、先天性子形態異常、子宮腺筋症、子宮留水症、プロゲステロン開始前の子宮内膜厚6mm未満、精巣内精子症例などは除外されています。前回の報告と異なり、内膜調整は施設基準に任せました。
結果:
105症例が対象となりました。4回目と5回目正常核型胚盤胞移植の生児出生率は4回目と5回目で同程度でした(40% vs. 53.3%、RR 1.33、95%CI 0.93-1.9、P=0.14)。特殊症例を除外した感度分析でも同様の結果が得られました。5回正常核型胚盤胞移植の累積生児出生率は98.1%(95%CI = 96.5-99.6%)でした。
「真の」原因不明RIFの発生率は、IVF集団において5%未満であろうと考えられます。。
結論:
着床失敗の明らかな病因が除外されれば、着床せずに過去に 3 回の卵割 胚盤胞移植を受けた患者では、4 回目の卵割 胚盤胞移植と 5 回目の卵割 胚盤胞移植は同程度の生児出生率を達成することが示唆されました。さらに、最初の3回の移植のデータが入手可能なRMAニュージャージーで治療を受けた女性では、4回目の多倍体胚盤胞は最初の胚盤胞と同程度の生着率を達成しました。これらの観察結果は、5回の連続した二倍体胚盤胞移植を行うまで、真のRIF集団が濃縮されるとは考えられず、そのような集団の有病率は2%未満であることを示唆しています。また、6回目の多倍体胚盤胞移植でも同様の着床/生着率が得られるかどうかは不明であり、6回目以降の移植の結果を明らかにするためにはさらなる研究が必要です。我々の結果と他の研究結果との組み合わせは、臨床的に妥当な場合にはいつでも、患者に自己の配偶子を用いた追加的な試みを奨励することを支持するものです(Cimadomoら、2021年)。

≪私見≫

Paul Pirteaらの施設での続報ではないのか?ということですが、前回の施設だけだと症例数が少なすぎたみたいです。ただ、前回の同様の施設のグループ施設、今回の結果と同様の流れとなっているというのが信ぴょう性を高めますね。
そう考えると、器質的な異常をしっかり改善させること、正常胚移植が入っている確率を高める移植を行うことが妊娠・出産への近道になってきますね。グレードが低い胚盤胞を凍結しない、二個胚移植をおこなうことがPGTを保険診療で行わない国内では絶対的出生数を保険内で増やす策になってしまいます。。。

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文責:川井清考(院長)

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