フラッシング採卵は意味があるの(Cochrane Database Syst Rev. 2022)

採卵時のフラッシング術を、症例を選ばず行うことは有効なのでしょうか。
こちらに関するコクランレビューをご紹介いたします。

≪ポイント≫

卵胞フラッシングの生児獲得率および流産率に対する効果は、卵胞吸引術のみの場合を比較して不確実であり、生殖医療結果を改善する結果に至りませんでした。採卵時間はフラッシングを行った方が長くなりました。有害事象は症例がすくなくメタアナリシスが行えていません。

≪論文紹介≫

Ektoras X Georgiou, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2022 Nov 21;11(11):CD004634.doi: 10.1002/14651858.CD004634.pub4.

2021年7月13日までのデータベース(Cochrane Gynaecology and Fertility Specialised Register of Controlled Trials、CENTRAL、MEDLINE、Embase、PsycINFOI)。
LILACS、Google Scholar、Epistemonikosを検索し、関連論文を比較検討した。選択する論文として、自己卵子にて体外受精を行う際に吸引術とフラッシング術を比較したRCTとし、評価項目は生児獲得率、流産率としました。
結果:
15件の研究1,643名女性を対象としました。フラッシング術が吸引術と比較して生児獲得率に及ぼす影響は不明でした(OR 0.93、95%CI 0.59~1.46;4RCT;n=467;I2=0%;中程度の証拠)。このことは、吸引術の生児獲得率が30%程度であるのに対し、フラッシング術の生児獲得率は20%~39%であることからです。吸引術とフラッシング術の流産率の影響は不明でした(OR 1.98、95%CI 0.18~22.22;1RCT;n = 164;低い証拠)。フラッシング術と吸引術の回収卵子数(MD -0.47、95%CI -0.72~-0.22;9RCT;n=1239;I2=61%;低い証拠)、胚数(MD -0. 10、95%CI -0.34~0.15;2 RCT;n = 160;I2 = 58%;低い証拠);臨床妊娠率(OR 1.12、95%CI 0.85~1.51;7 RCT;n = 939;I2 = 46%;低い証拠)の差は明らかではありませんでした。採卵にかかる時間はフラッシング術が長くかかりました(MD 175.44秒、95%CI 152.57~198.30;7RCT;n=785;I2=87%;低い証拠)。有害事象に関するメタアナリシスを実施することはできませんでした。

≪私見≫

当院では、poor responder症例に限りフラッシングと行い、通常採卵は吸引法を選択しています。個人的にも全症例にフラッシングのメリットはないのかなと感じています。

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文責:川井清考(院長)

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