採卵時回収卵なかった場合の追加人工授精は無益(Reprod Biomed Online 2014)

採卵をおこなって回収卵がなかった場合の患者様・医療者の落胆は大きいですよね。
少しでも可能性があるなら、タイミング・人工授精を行うことに意味がありませんか?とおっしゃる方もいらっしゃいます。採卵時に回収卵がない場合(Empty Follicle Syndrome)に追加人工授精をおこなった報告をご紹介させていただきます。

≪ポイント≫

採卵時回収卵なかった場合の追加人工授精の有効性は極めて低そうです。

≪論文紹介≫

Matorras R, et al. Reprod Biomed Online 2014 Nov;29(5):634-9. doi: 10.1016/j.rbmo.2014.07.020.

2000年から2012年に体外受精の採卵時に回収卵がない場合(Empty Follicle Syndrome)に追加人工授精を行った54症例と、低卵巣刺激で人工授精をおこなった5,394症例の臨床成績を比較検討したレトロスペクティブコホート研究です。追加人工授精は採卵の1時間後に実施しました。トリガーはuhCG 10000単位もしくはrhCG 250ugでの排卵誘発でのEFSを対象としています。
採卵をおこなって回収卵子がなく、レスキュー人工授精をおこなう条件は下記項目としました。

  • 排卵誘発時に13mm以上の卵胞が1~6個
  • 卵管疎通性が少なくとも片方が確認
  • 調整後運動精子数が300万/mL以上

結果:
追加人工授精(トリガー時 3.3±1.2個の発育卵胞)は一例も妊娠例がいませんでした(0/54)。当施設で行われた一般的な人工授精(トリガー時 3.5±1.2個の発育卵胞)での妊娠率は17.5%でした。相対リスクは19.2であり、女性年齢と子宮内膜症で調整した後の相対リスクでも11.7でした。

≪私見≫

この結果をみると適切な排卵誘発の後に起こる「 genuine 」 Empty follicle syndrome では追加人工授精はほぼ無益でありそうですね。

空胞化症候群の一部の症例には透明帯異常疾患?(論文紹介)
採卵時の空胞は加齢や卵胞発育数と関係するの?(論文紹介)
採卵時の空胞・変性卵・未熟卵のみの割合(当院からの報告)

文責:川井清考(院長)

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