採卵時のフラッシングは出生率上昇につながるの?(論文紹介)
採卵時のフラッシングは空胞を減らせるの?、というブログを以前掲載いたしました。今回は採卵時のフラッシングの出生率まで評価したシステマティックレビューおよびメタアナリシスが報告されましたので、ご紹介いたします。
Martini AEら. Fertil Steril. 2021. DOI 10.1016/j.fertnstert.2020.10.064.
≪論文紹介≫
1989年-2020年の間に英語で発表された卵子採取時の卵胞フラッシング法と持続吸引法を比較した無作為化比較試験をPubMed, EMBASE, Cochrane Database, Web of Scienceで系統的に検索しました。主要評価項目は出生率、副次評価項目として臨床妊娠および妊娠継続率、回収卵子および回収成熟卵子数、および手術時間としました。
結果:
卵胞フラッシング法と持続吸引法の間に、出生数の差は認められませんでした。臨床妊娠および妊娠継続率はフラッシング法によって改善されませんでした。回収卵子および回収成熟卵子は、持続吸引法に比べてフラッシング法の方が少なくなりました。手技時間は、poor responderでは2分、normal responderでは9分、フラッシング法により増加しました。
結論:
卵子採取時に卵胞フラッシング法を行うことは、手技時間を増加させ、出生数や臨床妊娠および妊娠継続率、回収卵子および回収成熟卵子数を改善しません。
≪私見≫
2012年に発表されたメタアナリシスにつづき、卵胞フラッシング法による改修卵子数の改善は見られず、処置時間が増加するという結果になりました。今回のメタアナリシスでは、その時より5つの追加試験が発表され1,178人の患者を対象とすることができ、出生率まで比較することが可能になりました。
今回の結果は2018年のコクラン・レビューとも一致します。
私たちも発育卵胞数が多い患者様では持続吸引法、少ない患者様でフラッシング法をおこなっています。今回のメタアナリシスでもpoor responderのフラッシングは否定されましたが、私たちは一定患者には有効と考えておりますので、フラッシングが卵子の質を低下させるというネガティブな発信がない限り継続を検討しているところです。
文責:川井清考(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。