フラッシュ採卵は黄体期が短くならない(前向きコホート2017)

単一発育卵胞に対するフラッシュ採卵をすると、黄体期のエストラジオール・プロゲステロンを分泌する顆粒膜細胞を過剰に回収してしまい、黄体機能不全を引き起こすのではないかと思いがちです。こちらに対して、同一患者でフラッシュ採卵を実施した場合と採卵を実施しなかった場合で差があったかどうかを比較した前向き研究をご紹介します。

≪ポイント≫

単一発育卵胞に対するフラッシュ採卵をおこなっても黄体期の長さ、初期・中期・後期のエストラジオール・プロゲステロン濃度に差がみられません。
単胞性体外受精で黄体期サポートが問われることがあります。

≪論文紹介≫

M von Wolff, et al.Reprod Biomed Online. 2017 Jul;35(1):37-41.  doi: 10.1016/j.rbmo.2017.04.003.

自然周期採卵を実施した女性24名を対象に、採卵周期と採卵を行わない周期で黄体期の長さ、初期・中期・後期のエストラジオール・プロゲステロン濃度を比較する前向きコホートを実施しました。採卵をしない周期と採卵をする周期の順番は決めていませんでした。採卵をしない周期はHCGでのトリガーは実施しますが、卵胞吸引を行ないませんでした。採卵を実施する周期も同様の条件で行い、採卵方法は19G針で卵胞吸引と洗浄を3回行いました。採卵を実施した周期では、採卵しない周期と比較して黄体期の長さは29.2%短く、16.7%同様、50.0%長くなり、全体では差はありませんでした。[採卵しない周期(中央値、四分位):(13、12; 14.5)、採卵周期(14、12.5;14.5)、mean difference (95%CI)0.5(-0.5~1.5)]、プロゲステロンおよびエストラジオール濃も黄体初期、中期、後期とも差を認めませんでした。

≪私見≫

この症例は33歳、BMI 22.5、AMH 22.5pmol/lの卵巣予備能が保たれた若年女性のデータです。卵巣予備能が低下している症例では結果が異なる可能性は否定できません。単一卵胞採卵ではフラッシングは効果的な手段かと考えます。
~関連ブログ~
採卵時のフラッシングは空胞を減らせるの?(論文紹介)

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

亀田IVFクリニック幕張