採卵時の吸引圧

採卵時の吸引圧が高いと、卵子が吸引針に入る前に卵胞が崩壊し、回収卵子数が低下することが懸念されています。針先での卵子に対する剪断作用、乱流の発生が上がるとされています。吸引圧が低い方がよいと引用される論文は実はかなり年代的に前の報告がほとんどです。

1. Lopata A, et al. Fertil steril 1974;25:1030-8
2. Edwards RG, et al. Br J Obstet Gynaecol. 1980;87(9):737-56
3. Lenz S, et al. Fertil Steril. 1982;38:673-7
4. Cohen J, et al. J In Vitro Fert Embryo Transfer 1986;4:224-226.

針の形状・太さも異なりますのでメーカー推奨と施設でのquality indicatorに応じた対応が必要と感じています。今のところ、「連続ポンプ吸引を行う場合の最適なポンプ吸引圧は不明ですが、吸引圧が低すぎるのも高すぎるのも良くない可能性がある。」というところでしょうか。

比較的最近の報告は以下のとおりです。

① 2019年:ASRM dialog
https://www.fertstertdialog.com/posts/56728-mcqueen-consider-this
17G針での150mmHgと300mmHgでの比較では、採卵時の吸引圧を低圧が高圧に比べて成熟回収卵子数が多く、有効胚数が多くなりましたが、圧差による妊娠率に差がありませんでした。

② T.Y Kim, et al.Human Reproduction, Volume 37, Issue Supplement_1, July 2022, deac107.623
150mmHgは120mmHgと比較して、採卵数が有意に多かったが、卵子の質、胚の質は同等でした。

③ Aswathy Kumaran, et al.J Hum Reprod Sci. 2015 Apr-Jun; 8(2): 98–102. doi: 10.4103/0974-1208.158617
120mmHg、140mmHg、フラッシュ後の120mmHgでの吸引を比較して、140mmHgによる採卵が回収卵子数および妊娠転帰に良好でした。

当院が使用しているシングルルーメン針での推奨吸引圧は以下のとおりです。こちらを参考に成績に応じて管理しています。
https://www.kitazato.co.jp/ja/pdf/needles/KITAZATO_OPU_NEEDLE.pdf
16G 100 ± 25mmHg
17G 125 ± 25mmHg
18G 150 ± 25mmHg
19G 175 ± 25mmHg
20G 200 ± 25mmHg
21G 225 ± 25mmHg
22G 250 ± 25mmHg

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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