国内基礎体温アプリによる国内女性の月経周期の特徴(Reprod Med Biol. 2023)
国内最大基礎体温アプリ「ルナルナ」における81,972名9314,08月経周期(18-59歳)のデータから、国内女性の卵胞期、黄体期の日数、温度を調査した報告です。
私も有料会員向けの質問コーナーの監修医として3年間担当させていただき、たくさんの学びがありました。今後も、企業と医療者が連携して国内女性のビッグデータ解析が幅広く普及すればよいですね。
≪ポイント≫
卵胞期は16.5日、36.4℃、黄体期は11.8日、36.7℃。年齢とともに変化するのは卵胞期日数と卵胞期日数のばらつきのみで、黄体期日数や卵胞期・黄体期温度には影響は与えていませんでした。
≪論文紹介≫
Sawa Mitake, et al. Reprod Med Biol. 2023 May 12;22(1):e12516. doi: 10.1002/rmb2.12516.
2015年から2019年にかけてスマートフォンアプリで収集した基礎体温データを用いて日本人女性の卵胞期と黄体期の長さを求め、そのデータをSensiplan法で分析しました。8万人以上の参加者の900万回以上の体温測定値を分析しました。
結果:
卵胞期の基礎体温中央値
36.4℃(95%範囲:36.0-36.7℃、50%範囲:36.3-36.5℃)
黄体期の基礎体温中央値
36.7℃(95%範囲:36.4-37.0℃、50%範囲:36.6-36.8℃)
卵胞期日数の中央値
16.5日(95%範囲:10.3-27.5日、50%範囲:14.3-19.0日)
黄体期日数の中央値
11.8日(95%範囲:7.5-16.0日、50%範囲:10.5-13.0日)
基礎体温は卵胞期、黄体期ともに30歳代が最も高くなりました。
日数:卵胞期の日数は20~29歳(18.0日)が40~49歳(15.4日)より長くなりました。黄体期の日数は年齢間で差はありませんでした
比較的若年層では卵胞期日数のばらつき(分散と最大-最小差)が大きくなりました。
≪私見≫
妊娠をするために、自分の身体を振り返ることは大事ですね。こちらも参考にしてください。
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まだまだ基礎体温アプリは不妊治療している場合の月経の乱れやピルを内服している場合の乱れなどを除外するアルゴリズムはありません。ただし、ビッグデータでの解析であること、国内のピルを含めたホルモン剤の普及率の低さを考えると、解析結果に影響を与えていないと考えて問題なさそうです。
文責:川井清考(院長)
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