卵巣刺激低反応群(Bologna/POSEIDON)の正常胚が含まれている割合を比較(Fertil Steril. 2023)

卵巣刺激反応不良群で、Bologna基準およびPOSEIDON基準のどちらが、その後の予後を反映するのでしょうか。
⚫︎POSEIDON基準
(すべての基準を満たさなければ認定されず、それ以外は非POR):
- I群(若年者、予期せぬPOR)
 < 35歳未満、AMH≧1.2ng/mL or AFC≧5だが、前周期MIIが<10個回収
- II群(高齢、予期せぬPOR)
35歳以上、AMH≧1.2ng/mL or AFC≧5だが、前周期MIIが<10個回収
- III群(若年層、予想されるPOR)
< 35歳未満、AMH<1.2ng/mL or AFC<5。
- IV群(高齢、予想POR)
35歳以上、AMH<1.2ng/mL or AFC<5。
⚫︎Bologna基準
(3基準のうち2つ以上、最大ゴナドトロピン投与によるキャンセルサイクルが過去2回あること、それ以外は非POR):
- 40歳以上、AMH < 0.5 - 1.1 ng/mL or  AFC < 5 - 7、前周期MIIが<4個回収
(今回の検討ではAMH 1.1ng/mL と AFC 5を採用)

≪ポイント≫

Bologna基準とPOSEIDON基準で予測される卵巣応答低下(POR)と、少なくとも1個の正常胚を獲得できる割合はI群>>II群>III群>IV群>Bologna基準PORの順に低下していくことがわかりました。

≪論文紹介≫

Andres Reig, et al.  Fertil Steril. 2023.  doi:10.1016/j.fertnstert.2023.05.007

Bologna基準およびPOSEIDON基準で診断した周期別に少なくとも1個の正常胚を獲得できる割合を調査したレトロスペクティブ・コホート研究です。
少なくとも1個の正常胚盤胞を獲得できた採卵周期割合を主要評価項目としMII卵子、受精卵、胚盤胞、正常胚盤胞数、胚コホートあたりの正常胚率も調査しました。
結果:
6,889周期を対象とし、3,653周期(53.0%)がPOSEIDON基準によりPORと分類されました: I群1.5%(100/6,889)、II群3.2%(222/6,889)、III群11.9%(817/6,889)、IV群 36.5%(2,514/6,889 )。Bologna基準では、23.4%(1,612/6,889)がPORと分類されました。I群は、PORと判定されなかった周期(91.9%, 95%CI: 90.9-92.8%, p = 0.09)と同様に少なくとも1個の正常胚を獲得できていましたが、それ以外はPOSEIDON群ごとに低下しました(II群:77.9%, 72.0-82.9%; III群: 70.5%, 67.3-73.5%; IV群: 44.8%, 42.9-46.7%; p < 0.0001) 、Bologna基準を満たすPORが最も低くなりました (31.9%, 29.7-34.3%; p < 0.0001)。 正常胚が含まれている周期割合は卵巣予備能と相関があり、胚あたりの正常胚率は年齢と相関しました。

≪私見≫

過去にも同様の内容はブログにアップしています。

この報告の面白いところはResultsです

⚫︎Bologna基準およびPOSEIDON基準の重なり合い
POSEIDON  I群、II群とBologna基準POR重複せず。
POSEIDON  III群、IV群の多くはBologna基準POR。
Bologna基準PORは全てPOSEIDON  III群、IV群(III群10.8%、IV群89.2%)

⚫︎PORの一貫性
今回の体外受精周期は4,928名の採卵回数は3,547名(72.0%)が1周期のみでしたが、他は2周期以上治療を行いました。1,961回の引き続き行われた治療周期のうち、POSEIDON基準1,628周期(83.0%)とBologna基準1,695周期(86.4%)が同じPOR基準でした
変化した群はPOSEIDON基準では、155/333(46.5%)が予後良好群に、178/333例(53.5%)が予後不良群に変化しました。Bologna基準では、36/266(13.5%)がPORから非PORに、230/266(86.5%)が非PORからPORに変化しました。

Bologna基準のほうがより厳格な基準と考えられますね。

文責:川井清考(院長)

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