帝王切開後のlarge nicheは子宮内膜厚に影響を与えない(前向きコホート.2023)

帝王切開術の合併症として、帝王切開瘢痕部欠損(子宮ニッチ: uterine niche)があります。Nicheがあると生殖医療成績に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。Nicheからの子宮内腔液の増加が着床障害を引き起こしている可能性がありますが、子宮内膜厚にどのように影響を与えているか調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

帝王切開後のlarge nicheは胚移植成績の低下が懸念されますが、子宮内膜厚に影響を与えていることはなさそうです。

≪論文紹介≫

Saskia J M Klein Meuleman, et al. Fertil Steril. 2023 Feb;119(2):322-325. doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.11.004.

アムステルダム大学医療センターで実施した前向きのコホート研究です。 2011年から2021年に残存筋層3mm未満、50%以上の欠損をlarge nicheと定義し、月経周期整の原因不明不妊女性を対象とし、子宮内膜厚に影響を与える可能性の高い薬剤の使用、卵管留水腫、内膜不整症例は除外しました。
結果:
141人の女性(子宮内腔液貯留がある女性 38人、子宮内腔液貯留がない女性 103人)を対象としました。患者背景はほぼ差がありませんでしたが、子宮内腔液貯留がある女性のほうが残存筋層は少なく、不妊期間が長くなっていました(27ヶ月(IQR 19-42ヶ月)vs. 24ヶ月(IQR 16-36ヶ月)、P=0 .02]。niche容積は両群で同等でした。
子宮内膜厚は両群間に統計的な有意差は認められませんでした(子宮内腔液貯留がある女性の子宮内膜厚 6.0mm(IQR 4.5-8.1mm)(CD11) vs. 子宮内腔液貯留がない女性の子宮内膜厚 6.6mm(IQR 4.5-9.0mm)(CD14)、P=0.25)。交絡因子補正後の線形回帰分析でも相関は認めませんでした。そのほか、サブグループ解析でも黄体期子宮内膜厚、子宮腺筋症の有無による違いなどでも差は認めませんでした。

≪私見≫

帝王切開後の胚移植成績は過去にもブログで取り上げています。
帝王切開瘢痕は妊娠時子宮破裂のリスクだけではなく続発性不妊の原因にもなりうることを頭の片隅にいれておくことが大事ですね。

 

文責:川井清考(院長)

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