帝王切開は胚移植の結果に影響を与えるの?(論文紹介)

帝王切開をしていると胚移植成績が低下するか?こちらに関しては結論がでていません。Najiらは、帝王切開の瘢痕が胚の着床の可能性を低下させ、自然流産につながると報告しています(Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2015)。また、Ben-Nagiは子宮の免疫生物学的変化、帝王切開、胚移植の間に関連があるかもしれないと報告しています(PLoS One. 2016)。一方、Zhangらは、帝王切開の瘢痕の有無は、体外受精後の妊娠成績に影響しないと報告しています(J Reprod Med. 1992)。今回、新鮮胚移植ではありますが、帝王切開既往と経膣分娩既往の胚移植成績を比較した報告をみつけましたのでご紹介いたします。

≪論文紹介≫

Wang YQ, et al. J Huazhong Univ Sci Technolog Med Sci. 2017. PMID: 29270754

体外受精・胚移植の妊娠・周産期結果に及ぼす帝王切開術既往の影響について検討した。2013年1月から2015年12月の間に帝王切開既往のある患者144人を対象に、レトロスペクティブ分析を行いました。対照群として、同じ期間に経膣分娩既往があり体外受精・胚移植を受けた患者166名としました。基礎basal FSH値、トリガー日のエストラジオール値、ゴナドトロピン投与量、卵巣刺激期間、回収卵子数、受精率、高品質胚率、多胎率、流産率、子宮外妊娠率に、両群間で有意な差はありませんでした(P>0.05)。帝王切開既往群は経膣分娩既往群に比べて妊娠率(40.28% vs. 54.22%)、着床率(24.01% vs. 34.67%)は有意に低く(P<0.05)、胚移植が困難症例率(9/144 vs. 0/166)は有意に高くなりました。多胎分娩における胎盤位置異常および産後出血のリスクは、帝王切開既往群が経膣分娩既往群に比べて有意に高くなりました(P<0.05)。帝王切開瘢痕の存在は、胚の着床や臨床的な妊娠経過に影響を与え、胚移植の難易度を高める可能性が示唆されました

≪私見≫

帝王切開瘢痕部症候群とよばれるような状態と、帝王切開をして瘢痕部が目立たない症例では着床に与える影響の議論が異なると思っています。
避けられる帝王切開は避ける方向がいいのかもしれませんね。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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