女性年齢が生化学妊娠(化学流産)に影響を与えるか?(日本産婦人科学会2021ポスター)
女性年齢の上昇に伴い、受精卵の染色体異数性の上昇・流産率の上昇が起こることが知られています。生化学妊娠(化学流産)は自然妊娠の場合は13%から23%、 着床前検査による正常核型胚の場合は約10%とされていますが、 妊娠判定のhCGのカットオフ値や測定時期の差により女性年齢と生化学妊娠の関係性は明確になっていません。今回、当院の高柳医師が亀田IVFクリニック幕張のデータをまとめて日本産科婦人科学会2021に「生化学妊娠が女性年齢により上昇するか」を検討し報告いたしました。
2017年1月から2020年12月まで亀田IVFクリニック幕張で凍結融解単一胚盤胞移植を実施し妊娠判定時hCG陽性となった615症例を女性年齢39歳以下(平均年齢34.3±3.3歳 :501症例、40-43歳(平均年齢41.1±1.0歳):114症例に分類し、 評価項目は生化学妊娠率、 妊娠継続率、 流産率を後方視的に検討しました。生化学妊娠は胚移植後7日後(3週5日)のhCG 5mIU/MLをカットオフ値とし、 2週間以内に胎嚢・子宮外妊娠が確認できないもの、 妊娠継続率は10週以上まで心拍が継続する妊娠と定義しました。
結果:
39歳以下群は40-43歳群と比較し、hCG陽性率・臨床妊娠率・妊娠継続率が高く、生化学妊娠率・流産率が低い傾向がありました。
考察:
年齢により生化学妊娠が増加するかどうかは議論されており、増加するという報告(Salumets Aら.2006)、 変わらないという報告(Michael H Dahanら。2021)ともにあります。現在のところ、 胚移植方法や時期、 妊娠判定時期を統一した報告がなく、当院の「女性年齢の上昇とともに生化学妊娠が増加する」という結果に対して、さらに症例を追加し解析していく予定です。
生化学的妊娠(化学流産)とは何ですか?(当院のデータをふまえて)
生化学妊娠(化学流産)は女性年齢とは関係ない?(論文紹介)
着床前診断を行ったら生化学妊娠(化学流産)は減少する?(論文紹介)
文責:川井清考(院長)
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