生化学妊娠(化学流産)は女性年齢とは関係ない?(論文紹介)

生化学的妊娠(化学流産)は、血中または尿中β-hCGを検出したあと、臨床的妊娠まで発生できない状態とされています。生化学的妊娠の本当の割合については、知られていません。生化学的妊娠は、自然妊娠の13%から23%であることが報告され、凍結胚移植と新鮮胚移植でも同様であることが示されています 。
ただし、現在まで女性年齢と生化学妊娠の割合を示す報告がほとんど存在しませんでした。彼らの研究は単一の凍結/新鮮胚移植を実施した比較的大規模な報告ですのでご紹介致します。
Michael H. Dahanら、Gynecological Endocrinology,2020. DOI: 10.1080/09513590.2020.1807931

≪論文紹介≫

2008年から2012年にかけて、単一凍結/新鮮胚移植を実施した2177人の女性患者を対象とした後方視的なコホート研究です。データは年齢で層別化され、分散分析とカイ二乗検定を用いて比較検討されています。
生化学妊娠の定義は胚盤胞では11日後、初期分割期胚では13日後の4週2日相当の血中β-hCG値が10mIU/ML以上とし、その後の超音波検査で子宮内妊娠、異所性妊娠をみとめないものと定義しています。流産率は24週未満に流産した妊娠と定義しています。
流産率は年齢とともに増加しました(p < 0.001)。今回の検討では、女性年齢の上昇は生化学的妊娠率には影響がありませんでした。(p=0.72)(21~30歳:10.7%、31~35歳:9.8%、36~40歳:11.5%、41~42歳:13.6%)。

≪私見≫

生化学妊娠がどの程度存在するかは、とても興味深いポイントです。今回の論文では年齢上昇によって生化学妊娠率が上昇しないと結論づけましたが、もう少し早いタイミング(胚移植後の妊娠判定は3週5日くらいから可能とされています)で生化学妊娠を検索するとどうだったのだろう?という興味が残ります。
生化学妊娠が受精卵側の要因なのか、母体側の要因なのか、今後報告が続いて来ると考えらえます。この後のブログでも同じようなテーマを何個か取り上げたいと思います。

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

亀田IVFクリニック幕張