正常胚を2回移植したときの相関関係(J Assist Reprod Genet. 2024)
PGTにて正常核型胚を移植した際の生児出生率は60%前後です。流産率が低く、女性年齢にほぼ依存しないのが特徴です。ただ、さまざまな理由で60%前後の生児出生しか見込めないのも事実で、子宮内膜の課題、胚と内膜の不調和、PGTや胚移植手技の課題が挙げられています。正常胚を2回移植するときに、初回の胚移植結果が2回目の胚移植結果に影響を与えるかどうかですが、生児出生に大きな影響を与えないというのが通説です。
今回、初回の結果を細かく分類した時の相関を示した報告が出てきましたのでご紹介いたします。
≪ポイント≫
2回目凍結融解正常核型胚盤胞移植の成績は、初回凍結融解正常核型胚盤胞移植の生児出生がポジティブに、過去の流産歴がネガティブに働きそうです。ただし、不育症の患者ではPGTは流産率が下がることがわかっていますので咀嚼した説明が必要だと思います。
≪論文紹介≫
Niyazi Emre Turgut, et al. J Assist Reprod Genet. 2024 Nov 19. doi: 10.1007/s10815-024-03329-w.
初回凍結融解正常核型胚盤胞移植の成績と、同一周期卵子による2回目凍結融解正常核型胚盤胞移植の成績に相関関係があるかを調査することを目的としたレトロスペクティブ研究です。正常核型胚盤胞移植1,051名がうけ、159名が2回目凍結融解正常核型胚盤胞移植を実施しました。評価項目は生児出生率としました。
結果:
2回目凍結融解正常核型胚盤胞移植を受けた159名は、初回凍結融解正常核型胚盤胞移植の着床成功率によって2つのサブグループに分類されました。これらの患者のうち、94名(59.1%)は陰性または生化学的妊娠である非臨床的妊娠群に属していました。残りの65名(40.9%)は生児出生もしくは流産で臨床的妊娠群としました。バイナリー・ロジスティック回帰分析では、初回凍結融解正常核型胚盤胞移植における生児出生は、その後の2回目凍結融解正常核型胚盤胞移植における生児出生に対して肯定的な独立因子でした(OR 4.14、95%CI 1.184-14.531、p< 0.026)。流産は、体外受精前および初回凍結融解正常核型胚盤胞移植で発生したものを含めて、生児出生率を約34%減少させました(p< 0.027)。2つのサブグループ間で流産率に差は認められませんでした。(19.2%(10/52) vs. 25.4%(14/55)、p= 0.38)。
≪私見≫
Pirteaらは着床側に目立った異常がない場合、正常胚を3回から5回移植すると92-98%生児出生に至るとしています。ただ、着床不全の原因は多岐にわたることは明確で今後Pirteaらの追試、また着床不全原因解明やアドオン治療がより進むことを期待したいと思っています。
着床不全の原因は?(論文紹介)
胚因子以外の反復着床不全は極めて稀(Hum Reprod. 2024)
反復着床不全のほとんどの原因は受精卵?(論文紹介)
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文責:川井清考(院長)
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