排卵周期凍結胚移植でのホルモン値をみたプロゲステロンレスキュー(J Assist Reprod Genet. 2024)

排卵周期で凍結融解胚移植を実施するとき、排卵後4日目の血清プロゲステロン値は高BMI、LUFで低下、排卵期の高エストラジオール値とプロゲステロン値で増加することがわかっています。
Sezcan Mumusoglu, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2023 Sep 18;21(1):86. doi: 10.1186/s12958-023-01136-z.
排卵後4日目の血清プロゲステロン値でプロゲステロンレスキューをした時に成績が変わるかどうか調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

胚移植日前日の血清プロゲステロン 7ng/mL 以上あれば基本はプロゲステロンレスキューをしなくても大きく成績は変わらない可能性が示唆されました。

≪論文紹介≫

Murat Erden, et al. J Assist Reprod Genet. 2024 Nov 9. doi: 10.1007/s10815-024-03309-0.

排卵周期凍結胚移植前日の血清プロゲステロン値が低い(7~10ng/mL)患者において、1日25mgのプロゲステロン皮下投与によるレスキューデイリーが生殖予後を改善するかどうかを検討しました。192名のコホート研究で移植前日の血清プロゲステロン値に基づいて3つの異なる群に層別化された:血清プロゲステロン値が7~10ng/mLでレスキュープロゲステロン投与を受けた患者(レスキュー群)、プロゲステロン投与を受けずに血清P4値が7~10ng/mLの患者(非レスキュー群)、およびFET-1日の血清P4>10ng/mLの患者(対照群)。主要評価項目は、生児出生率としました。
結果:
血清プロゲステロン値が7~10ng/mLの群(レスキューなし群)、7~10ng/mLの群(レスキューあり群)、および10ng/mL超の群(対照群)の生児出生率は、それぞれ41%、46%、および52%でした(p= 0.61)。血清プロゲステロン 7~10ng/mL(レスキューなし群)、7~10ng/mL(レスキューあり群)、および10ng/mL超(対照群)の推定調整出産確率も同程度でした: それぞれ43.5%(95%CI、20.0-70.4%)、49.8%(95%CI、28.1-71.6%)、57.4%(95%CI、44.0-69.8%)でした。

≪私見≫

排卵周期凍結胚移植周期では、2RCT メタアナリシスではプロゲステロン腟剤を併用すると生児出生率が改善することが指摘されています。
 Wånggren K, et al. Hum reprod. 2022;37(10):2366–74. Doi:10.1093/humrep/deac181.
 Bjuresten K, et al. Fertil Steril. 2011;95(2):534–7. Doi:10.1016/j.fertnstert.2010.05.019.
 Jiang Y, et al. Fertil Steril. 2023;119(4):597–605. Doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.12.035.
 ブログ(排卵周期凍結融解胚移植は黄体補充が効果的?(meta-analysis2022)

今回の結果では有意差はつきませんでしたが、同様の傾向がみられることからType IIエラーの可能性もふまえて、他の報告を見ていく必要がありそうです。

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文責:川井清考(院長)

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