着床不全の原因は?(論文紹介)

反復着床不全のReviewがFertil Steril 2021に掲載されました。まとまっていましたのでご紹介させていただきます。

≪論文紹介≫

Garneau AS, et al. Fertil Steril. 2021. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2021.10.023
着床不全の原因は①受精卵側の原因、②母体側の原因、③子宮内膜-胚の着床における不調和とされています。

①受精卵側の原因

着床不全の一番の原因は受精卵の染色体異常とされていて、女性の加齢とともに胚盤胞に到達しても染色体異常の割合が増えて着床不全の原因となるとされています。
また、正常核型胚を戻しても着床不全率は19%〜33%とされています。染色体異常以外では、遺伝子変異やDNAメチル化の変化が着床不全に与える影響も考えられていますが、現在のところ因果関係はわかっていません。受精卵から発現するサイトカインや転写因子などが着床と関連している可能性は以前よりマウスの研究では報告されていますがヒトでは明らかになっていません。

②母体側の原因

以前より母体側で話題にあがるのは子宮内膜の厚みです。賛否両論ありますが着床に影響を与えると考えられています。その他に内膜組織が着床できるように変化することも大事です。通常、胚を受け入れる受容能期間は2日程度とされています。
Pirteaらは正常核型胚の着床率は,同じ黄体補充を行なって実施したところ、初回 70%,2回目 60%,3回目 60%であり,累積着床率は2回目まで88%,3回目まで95%であることを示し、真の「母体側」「子宮内膜-胚の着床における不調和」による着床不全はそう多くいないと報告しました(関連ブログ:反復着床不全のほとんどの原因は受精卵?)。ただし、予後良好と思われる患者背景であったこと、途中の脱落が数多くいたことから疑問視する意見が様々あります。反対に2回以上の着床不全既往歴がある場合、正常核型胚移植を受けた女性は生児を出産する可能性が低くなることを示す報告もでていきています(着床不全既往なし 47% vs. 2回以上の着床不全 36%)。(関連ブログ:過去の流産や反復着床不全は正常核型胚の出生率にどう影響する?
着床不全の原因として母体因子は子宮内と交通のある卵管水腫、慢性子宮内膜炎に伴う炎症が起きている状態が挙げられます。子宮内と交通のある卵管水腫の影響は、複数の無作為化試験で十分に実証されており、慢性子宮内膜炎は着床率が3倍低下するとされています。粘膜下筋腫や子宮内膜ポリープなどの子宮内病変も着床不全の原因となります。子宮内膜症が着床不全の原因となる場合もあり(基本は影響しないという意見が根強くあります)、GnRHアゴニストによる子宮内膜症治療や外科的治療が治療成績を向上させるという報告もあります。他に、抗リン脂質抗体症候群、PCOS、肥満、喫煙など多くの病因が考えられていますが原因不明のものもあります。特定のハプロタイプや免疫学的な原因も考えられます。

③子宮内膜-胚の着床における不調和

子宮内膜のプロゲステロンの暴露期間は重要であるとされていますが評価が難しいです。内膜受容能検査が出てきていますが、本当に効果があるかどうか結論はでていません。そのほかにエストロゲンやプロゲステロンによる子宮内膜細胞の変化や、子宮内膜と受精卵の双方向のクロストークが重要とされていますが、臨床に応用される検査・治療などは現在のところ確立されていません。

文責:川井清考(院長)

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