PRP卵巣注入は卵巣反応不良群に効果的(Hum Reprod. 2024)
PRP卵巣注入、生殖補助医療業界では話題になっていて、行われている施設が増えているのではないでしょうか。生理食塩水注入との二重盲検ランダム化試験がでてきました。筆者らは、「卵巣の若返りではなく、卵胞の活性化または再活性化」による作用なのではないかとしています。連続採卵するごとに回収卵が生理食塩水でもPRPでも増加しています。
≪ポイント≫
PRP卵巣注入は、発育した胚盤胞の質を高めることなく、回収卵子の数を増加させます。
≪論文紹介≫
G Barrenetxea, et al. Hum Reprod. 2024. doi: 10.1093/humrep/deae038.
PRP卵巣注入が回収卵子数を増やし生殖医療成績を改善するかどうかをプラセボ群と比較検討したプラセボ対照二重盲検ランダム化試験です。POSEIDON分類群3および4に従って層別化された卵巣反応不良群60名を対象としました。対象者の特徴は、30歳以上42歳未満、BMI 18-32、月経周期が整としています。
卵子を蓄積させるために連続3回の卵巣刺激を受けることが提案され、初回採卵時にPRP群またはプラセボ群に無作為に割り付けられました。すべての対象者は3回の卵巣刺激と採卵を実施しました(初回・2回目採卵は卵子凍結)。顕微授精は3回目採卵後にまとめて実施されました。主要評価項目はPRPまたはプラセボ注入後に回収された成熟卵子数としました。
結果:
患者背景(年齢、BMI、AMH)は群間で同等でした。PRPまたはプラセボ注入後に回収された累積成熟卵子数はPRP群でわずかに多くなりました(10.45±0.41個 vs. 8.91±0.39個 差の95%CI :0.42-2.66;P = 0,008)。全患者で得られた成熟卵子数は採卵ごとに増加しました。初回採卵2.61±0.33個、2回目採卵で3.85±0.42個、3回目採卵で4.73±0.44個でした。2回目採卵ではPRP群4.18±0.58個、プラセボ群3.27±0.61個(差95%CI:-0.30~2.12;P = 0.138)、3回目採卵ではPRP群5.27±0.73個、プラセボ群4.15±0.45個(差95%CI:0.12~2.12;P = 0.029)とPRP群でやや増える印象となりました。発育胚盤胞数およびPGT可能胚盤胞数は、プラセボ群2.43±0.60個、PRP群1.90±0.32個でした(P = 0.449)。正常核型胚盤胞数は、プラセボ群0.81±0.24個、PRP群0.81±0.25個でした(P = 1.000)。正常核型胚盤胞を獲得できた患者割合はプラセボ群53.33%(16/30)、PRP群43.33%(13/30)でした( P = 0.606)。妊娠成績はプラセボ群の方が高い結果となりました。分娩方法、新生児性別に関しては両群間に差はありませんでした。
≪私見≫
PRP卵巣注入が効果的なのか、機械的刺激自体が効果的なのか、今後も注視していきたいと思います。このデータだけ見ると、現在の日本の保険診療ではPRP卵巣注入を行うより採卵を繰り返す方が、費用対効果がよいように感じてしまいます。
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文責:川井清考(院長)
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