季節変動が体外受精成績に与える影響(Hum Reprod. 2023)
体外受精成績と周囲の気温の影響には一貫した結果は認めておらず、さまざまな報告があります。卵巣刺激前3ヶ月から出産までの期間を8期間にわけて周囲気温との体外受精成績の結果を比較した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
周囲気温が極端に低い場合と高い場合の両方が、体外受精周期にネガティブな影響を与えていそうです。
≪論文紹介≫
Lulu Geng, et al. Hum Reprod. 2023 Sep 27;dead192. doi: 10.1093/humrep/dead192.
2016年4月から2020年12月に上海の生殖医療施設で初回新鮮胚移植または凍結融解胚移植を実施した3,452名のデータベースからレトロスペクティブ・コホート研究を実施しました。
結果:
臨床妊娠率45.7%、生児出生率37.1%(約32歳 BMI 22前後)でした。臨床妊娠に関しては、寒い時期の体温上昇は、卵巣刺激前の約11週間における妊娠率上昇と関連していました(aOR=1.102、95%CI:1.012-1.201)。生児獲得に関しては、寒い時期の体温上昇は、臨床妊娠または生化学妊娠後の期間における生児獲得率上昇と関連していました(臨床妊娠:aOR=6.299、95%CI:3.949-10.047、生化学妊娠:aOR=10.486、95%CI:5.609-19.620)。しかし、暑い時期の体温上昇は、臨床妊娠または生化学妊娠後の期間における生児獲得率上昇と負の相関を示しました(臨床妊娠:aOR=0.186、95%CI:0.121-0.285、生化学妊娠:0.302、95%CI:0.224-0.406)。さらに、寒い時期および暑い時期の生児獲得率低下は、早期流産率上昇によるものでした(P<0.05)。
≪私見≫
毎回思いますが、季節と体外受精成績の示す報告は差があるという報告すら時期が異なります。地域や外気温にどの程度影響を受ける環境(エアコンや個々の労働環境)であるかどうかなどで変わってくるのかもしれません。
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文責:川井清考(院長)
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