フラッシング法による採卵は吸引法より有用(Hum Reprod. 2023)

過去のメタアナリシスでは、フラッシング法による採卵は吸引法による採卵と比較して、臨床妊娠率や生児獲得率を増加させず、採卵時間の延長につながるとしており、全患者へのフラッシング法を用いた採卵は推奨されていない方向になっています。ただ、条件がバラバラであるため、質の高い臨床試験が必要と考えられていました。単一施設で同様卵巣刺激をおこなって卵巣反応別にフラッシング法と吸引法の有用性を比較した単一施設ランダム化比較試験をご紹介します。

≪ポイント≫

条件を整備したランダム化比較試験では、フラッシング法による採卵は吸引法より回収採卵数が増加しました。

≪論文紹介≫

G T Lainas, et al.  Hum Reprod. 2023 Aug 25;dead169.  doi: 10.1093/humrep/dead169.

105名の患者を対象とした単一施設ランダム化比較試験を2022年7月から12月にかけて実施しました。対象は体外受精(顕微授精)を行なった年齢43歳未満、BMI 18-35の女性であり、左右卵巣にトリガー時に11mm以上の卵胞がそれぞれ1つ以上ある患者を対象としました。研究参加は1度のみとしました。卵巣反応はトリガーする場合の11mm以上の発育卵胞個数で決定していて、2-4個:低反応、5-18個:正常反応、19個以上:高反応としました。各患者の卵巣を吸引法またはフラッシング法にコンピューターで採卵当日に無作為に割りつけました。採卵針は同じ16Gダブルルーメン針を使用し、吸引圧190mmHg、流速0.42ml/sとしました。フラッシング法は卵子が回収されない場合は最大5回までフラッシングを繰り返しました。主要評価項目は回収卵子数、副次評価項目は回収卵子率、卵子成熟率、受精率、2日目良質胚率としました。
結果:
吸引群に比べ、フラッシング群では、全患者で多くの回収卵子数が獲得[5(7)vs. 2(3)、P<0.001]でき、高反応[9(3)vs. 5(4)、P<0.001]、正常反応[5(2)vs. 2(3)、P<0.001]、低反応[1(1)対1(1)、P<0.001]でも同様の傾向でした。低反応患者では、フラッシング群では5.7%で空胞であったのに対し、吸引群では42.8%が空胞であった(P < 0.001)。卵子回収率は、全患者[88.9%(25.0) vs. 45.5%(37.5)、P<0.001]、高反応[81. 8%(15.9%)vs. 45.5%(22.2%)、P<0.001]、正常反応[85.7%(28.6%)vs. 40.0%(30.0%)、P<0.001]、低反応[100%(0%)vs. 50.0%(100%)、P<0.001]であった。成熟率[85.2%(30.8) vs. 100%(33.3)、P = 0.78]、受精率[76.4%(50) vs. 83.3%(50)、P = 0.42]、2日目良質胚率[83.3%(40) vs. 100%(50)、P = 0.62]には差が認められませんでした。卵巣反応別に解析しましたが同様の傾向でした。フラッシング群は、全患者[248秒(332) vs. 135秒(164)]、高反応[464秒(225) vs. 237秒(89)、P<0.001]、正常反応[248秒(108) vs. 141秒(95)、P<0.001]、低反応[64秒(59) vs. 48秒(10)、P<0.001]と吸引群に比べて採卵時間が延長しました。

≪私見≫

当院では、低反応者にはフラッシング採卵をおこなっています。
まだまだ意見がわかれているテーマなので、今後の追試に注目したいと思います。

〜フラッシング採卵に関する関連ブログ〜
採卵時のフラッシングは空胞を減らせるの?(論文紹介)
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文責:川井清考(院長)

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