高ホモシステイン血症は周産期合併症を増加させる(レトロスペクティブ2020)

高ホモシステイン血症は、内皮機能障害の危険因子である可能性がある。葉酸とビタミンB12は、ホモシステインの代謝過程を調節します。妊娠初期の葉酸、ホモシステイン、ビタミンB12が周産期合併症と関連があるかどうか示した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

高ホモシステイン血症は、周産期合併症(妊娠高血圧腎症、早産、低出生体重児、死産)と関連してそうです。妊娠前からの葉酸摂取が血中ホモシステイン濃度を低下させ周産期合併症リスクが低下させる可能性があります。
葉酸摂取はサプリメントでは一日0.4-0.8gでの摂取が好ましいとされています。

≪論文紹介≫

Chenggui Liu, et al. BMC Pregnancy Childbirth. 2020 Mar 18;20(1):176. doi: 10.1186/s12884-020-02860-9.

妊婦のホモシステイン、葉酸、ビタミンB12値と周産期合併症の関連を評価することを目的に行われた多施設共同、レトロスペクティブ、ケースコントロール研究です。周産期合併症をみとめた563名と600人のコントロール群を比較しました。周産期合併症には妊娠高血圧腎症、早産、低出生体重児、死産のうち1つ以上含まれていることとしました。
結果:
ホモシステイン濃度の下位四分位と比較して、上位四分位のホモシステイン濃度は、妊娠高血圧腎症、早産、低出生体重児と関連していました。葉酸濃度の下位四分位は上位四分位と比較して、妊娠高血圧腎症、早産、低出生体重児と関連していました。周産期合併症の発生率は、ホモシステイン、葉酸とも四分位ごとに徐々に変動しました。多変量ロジスティック回帰分析では、収縮期血圧、拡張期血圧、BMI、年齢の他に、ホモシステイン(IV vs. I四分位、aOR 5.89, 95% CI 4.08-8.51, P < 0. 001)、葉酸(IV vs. I四分位、aOR 0.35、95% CI 0.25-0.50、P < 0.001)、妊娠初期の葉酸サプリメント(あり vs. なし、aOR 0.55, 95% CI 0.35-0.86, P = 0.010 )がその後の周産期合併症と独立して関連し、ビタミンB12は否定されました。このうち、ホモシステインはすべてのリスク変数で最も高いオッズ比を示し、葉酸はすべての保護変数で最も低いオッズ比を示しました。

≪私見≫

周産期合併症を有する妊婦は、コントロール群と比較して、ホモシステイン、TC、TG、LDL-C、空腹時血糖、年齢、収縮期血圧、拡張期血圧、BMIが高く、葉酸、VB12、HDL-C濃度が低いという特徴を認めました(P < 0.05)。
また、周産期合併症を有する妊婦は葉酸およびVB12値が低く、サプリメント摂取率が低くなっていました。

妊娠前および妊娠初期に葉酸を補充することで、妊婦中の血中ホモシステイン濃度が低下し、周産期合併症リスクが低下することを示唆する報告が増えてきています。
Wen SW, et al. Am J Obstet Gynecol. 2008;198(1):45.e1–7.
Wen SW, et al. PLoS One. 2016;11(2):e0149818.
Zheng JS, et al. Br J Nutr. 2016;115(3):509–16.
Li N, et al. J Pediatr. 2017;187:105–10.
Hodgetts VA, et al.  BJOG. 2015;122(4):478–90.

ホモシステインは当院でもプレコンセプションドックで測定を行っています。
ホモシステインとビタミンDの関連(論文紹介)
MTHFR遺伝子多型の不妊・不育症患者での割合(論文紹介)

文責:川井清考(院長)

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