ホモシステインとビタミンDの関連(論文紹介)

ホモシステインは、アミノ酸のひとつであるメチオニンの代謝における中間生成物です。ホモシステインは悪玉アミノ酸と言われており、以前より動脈硬化症や血栓症のリスク因子になるとされています。生殖年齢女性においては、賛否がありますが、胚発生障害、流・早産リスク、先天奇形リスクとの関連性も指摘されています。
不妊治療分野で、よく測定されるビタミンDとの相関を調べた論文をご紹介いたします。

≪ポイント≫

ホモシステインとビタミンDは逆相関関係があり、血清25(OH)ビタミンDレベル21ng/mL以下になったときにのみ関連することがわかりました。

≪論文紹介≫

Muhammad Amer , et al. J Clin Endocrinol Metab. 2014.  DOI: 10.1210/jc.2013-3262.

ホモシステインとビタミン25(OH)Dとの関係を無症候性成人(18歳以上)の2001-2006年National Health and Nutrition Examination Surveyデータを用いて解析しました。
結果:
14,630名の平均(SD)年齢は47.2(20)歳、ホモシステイン値は8.8(4.7)μmol/L、25(OH)Dの中央値(四分位範囲)は21(15-27)ng/mLでした。スプラインを用いない場合,単純回帰[-0.25(-0.34~-0.02)μmol/L]および多変量回帰[-0.13(-0.18~-0.01)μmol/L]ともにホモシステインと25(OH)Dは逆相関が観察されました.スプラインを用いた一変量モデルでは、25(OH)Dが中央値(21ng/mL)以上になるまでは、25(OH)Dの増加はホモシステインの有意な減少[-0.56(-0.75~-0.37)μmol/L]に関連していました。同様に、多変量スプラインモデルでは、ホモシステインと25(OH)Dの逆相関は、25(OH)Dの中央値以下でのみ有意なままでした[-0.49 (-0.67 to -0.31) μmol/L]。

≪私見≫

メチオニン代謝に関与する酵素(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素[MTHFR]、メチオニン合成酵素還元酵素など)やホモシステインに関与する酵素(シスタチオニンβ-シンターゼなど)遺伝子変異や、血清葉酸およびビタミンB12の欠乏は、高ホモシステイン血症の原因となります。活性化ビタミンDがホモシステイン代謝に関与する酵素の遺伝子発現を調節していると考えられることから、ビタミンDも今回の報告から高ホモシステイン血症の原因となりそうです。

Longitudinal Aging Study Amsterdamのデータを用いた報告でも今回の報告同様、25(OH)Dとホモシステインに有意な相関(P < 0.05)を報告しており、25(OH)Dが20〜24ng/mLのときにホモシステイン値が最も低くなるU字型であり、移行点は20.7ng/mLであることを報告しています(Kriebitzsch C, et al. J Bone Miner Res. 2011)。
これらのことを考えると、ホモシステインの観点からもビタミンD摂取は必要だろうと思っています。

文責:川井清考(院長)

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