葉酸と神経管閉鎖障害(エコチル調査)

日本の環境省が実施するエコチル調査(全国規模の出生コホート研究であるJapan Environment and Children's Study(JECS))による葉酸と神経管閉鎖障害の関係をご紹介します。

≪ポイント≫

エコチル調査に登録した92,269名のうち、74名が神経管閉鎖障害(NTDs)を認めました。葉酸サプリメント妊娠前摂取がエコチル調査では神経管閉鎖障害と関連を認めませんでした。差が生まれなかったのは発症率が低い疾患のため、統計的手法として症例数の不足などが考えられます。引き続き、妊娠前の葉酸サプリメントの摂取は推奨されます。

≪論文紹介≫

Hidekazu Nishigori, et al.  Congenit Anom (Kyoto). 2019 Jul;59(4):110-117.  doi: 10.1111/cga.12293.
Comment 
Yuto Maeda, et al.Congenit Anom (Kyoto). 2020 May;60(3):100.  doi: 10.1111/cga.12369.

原著:
エコチル調査(全国規模の出生コホート研究であるJapan Environment and Children's Study(JECS))を用いて、妊娠前の母親の葉酸補給とNTDs児との関係を評価しました。単胎妊娠92,269名のうち、74名にNTDs(二分脊椎32名、無脳症24名、脳瘤19名)認めました。7634人(8.27%)が妊娠前の葉酸サプリメントを利用し、そのうち621人(0.67%)が480μg/日以上の食事性葉酸も摂取していました。多変量ロジスティック回帰分析により、妊娠前の葉酸サプリメント摂取とNTDs児発症との関連は認められませんでした(OR 0.622、95%CI:0.226-1.713)。妊娠前の葉酸サプリメント摂取と480μg/日以上の食事性葉酸摂取を組み合わせた参加者は、NTDs児発症は認めませんでした。
コメント:
以前のメタアナリシスでは、葉酸サプリメントはプラセボ群と比較して、毎日の葉酸補給でNTD児発生率が69%減少することが実証されています。今回の研究でも、妊娠前に葉酸サプリメントを摂取の有無でのNTDs児リスクは、出生1万人あたりそれぞれ5.24および8.27で、世界で報告されている過去のデータとほぼ同等でしたが統計的な問題で差がないとされています。こちらは、統計的な検出力の問題で症例数が77万件あって有意差がつく事例なので、今回の検討では妊娠前のプレコンセプションユースに意味がないという解釈にならないよう慎重に解釈されるべきと考えられます。

    全体 92,269名 割合
葉酸サプリメント プレコンセプション摂取 7,634名 8.27%
妊娠後摂取 28,565名 30.96%
摂取なし 56,070名 60.77%
葉酸食事摂取 中央値
(四分位)
247.0(178.0-339.0)
x<240ug 43,510 47.16%
240ug<x<480ug 40,616 44.02%
480ug<x<1000ug 7,064 7.66%
1000ug<x 526 0.57%

Table.1より改変(不妊治療患者は6.6%)

≪私見≫

葉酸のサプリメントでの摂取は、どのような食事をとっていても1-3ヶ月前から服用するのがベターだと思います。ただし、国内のデータを見ていくと、偶発的な葉酸摂取前の妊娠だからといって過度なNTD発生率の過度な不安感に襲われる必要はないのかな?と感じています。葉酸をとっていなければ、着床がわかったらすぐに摂取していただくことをお勧めいたします。

過去のブログで、そのほかのエコチル調査結果も取り上げていますので参考になさってください。
体外受精妊娠における精神発達の評価(エコチル調査)
体外受精が周産期予後に及ぼす影響について(エコチル調査)

文責:川井清考(院長)

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