精子DNA断片化検査が悪いと流産率が高くなる?(論文紹介)

精子DNAは胚発生の重要な因子となり、精子DNA断片化検査は精子の質を評価する上で、精子数、運動率、形態と独立した重要なマーカーとなってきています。単一胚盤胞凍結融解胚移植をおこなったときの臨床成績が事前に行った精子DNA断片化検査の結果と関係するかを調べた報告をご紹介いたします。

≪論文紹介≫

Huan Zhang, et al. J Assist Reprod Genet. 2022. DOI: 10.1007/s10815-022-02484-2
2010年1月から2017年8月にかけて中国で行われた後方視的研究です。
単一胚盤胞凍結融解胚移植2034例(ICSI胚:536、IVF胚:1498)を精子DNA断片化検査によって2群(DFI < 27.3% 群とDFI ≥ 27.3% 群)にわけ、Mann-Whitney検定およびカイ二乗検定を使用して、2群間の患者特性および臨床転帰を比較し、ロジスティック回帰分析を行いSDFと臨床転帰の関連を解析しました。精子DNA断片化検査はHalospermキットを用いて精子400匹で評価し、彼らが卵巣予備能低下女性で以前検討し臨床転機が低下した基準値 27.3%をカットオフ値として設定しています。
結果:
カイ二乗検定の結果、HCG陽性率、臨床妊娠率、流産率、生児出生率は両群間に差はありませんでした。ロジスティック回帰分析の結果でも精子DNA断片化検査結果はHCG陽性率、臨床妊娠率、流産率、生児出生率の予測因子ではなかった。

≪私見≫

この結果は胚盤胞移植ができる胚が準備できた場合の単一胚盤胞凍結融解胚移植の成績は精子DNA断片化検査の結果で変わりませんよという論文です。
つまり、精子DNAダメージが高いと胚盤胞になる前に、胚発生を止まってしまう、もしくは凍結基準をみたさない胚盤胞となっている可能性があります。
今回の結果でも単一胚盤胞移植をおこなった胚のIVF胚はやや胚盤胞グレードが低いです。精子DNA断片化が高ければ、少なくともICSIもしくはsplitを行うこと、胚盤胞まで培養してから胚移植を行うことが現段階での対応かなと考えています。

~過去の関連ブログ~
精子DNA断片化検査の位置付け(WHO精液検査マニュアル第6版)
卵子は精子のダメージを修復する?
精子DNA断片化テストが体外受精の出産率に影響する?

文責:川井清考(院長)

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