卵巣機能低下症例にPPOSは有効?(論文紹介)

卵巣予備能が低下した高齢女性の初回の体外受精周期においてマイルド刺激との成績を比較した報告です。過去の報告より比較的多い症例数ですのでご紹介させていただきます。

≪論文紹介≫

Xiaoyu Tu, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2022. DOI: 10.3389/fendo.2021.801026

2017年1月から2020年12月に、35歳以上の卵巣機能不全女性(AMH<0.5-1.1ng/mLまたはAFC<5-7)で初回の体外受精周期の女性を対象としたレトロスペクティブコホート研究です。PPOSとマイルド刺激をそれぞれ139人と600人に実施しました。
主要評価項目は累積臨床妊娠率および累積生児出生率としました。副次評価項目は、回収卵子数と良好有効胚としました。
結果:
PPOSとマイルド刺激の患者背景に差がありませんでした。総ゴナドトロピン量はPPOS群が多く(1906.61 ± 631.04 IU vs 997.72 ± 705.73 IU, P<0.001)、刺激時間が長くなりました(9 (10-7)日 vs 6 (8-4)日, P<0.001)。
回収卵子数(3(6-2)個 vs 2(4-1)個、P<0.001)および良好有効胚(1(2-0)個 vs 1(2-0)個、P=0.038)はマイルド刺激よりPPOSの方が良い傾向にありましたが有意差がありました。LHサージの発生率は、PPOSがマイルド刺激に比べ低くなりました(0.7% vs. 8.3%、P=0.001)。
累積臨床妊娠率、累積期待臨床妊娠率、累積生児出生率、累積期待生児出生率には差はありませんでした。
多変量ロジスティック回帰モデルでは、回収卵子数と良好有効胚が累積臨床妊娠率(OR=1.236, 95%CI: 1.048–1.456, P=0.012, OR=2.313, 95%CI: 1.676–3.194, P<0.001)および累積生児出生率 (OR=1.250, 95%CI: 1.036–1.508, P=0.020, OR=2.634, 95%CI: 1.799–3.857, P<0.001)に正の相関を、女性年齢が累積臨床妊娠率(OR=0.805, 95%CI: 0.739–0.877, P<0.001)および累積生児出生率 (OR=0.797, 95%CI: 0.723–0.879, P<0.001)に負の相関を示すことがわかりました。

プロトコールは以下の通り
・PPOS群
MPA 10mg/日またはDYG 20mg/日
day2-3からトリガーまで ゴナドトロピン150〜300IU/日
・マイルド刺激群
クエン酸クロミフェン50〜100 mg/日またはレトロゾール2.5〜5 mg/日
day2から5日間投与 その後ゴナドトロピン 0-225 IU/日をトリガーまで

トリガーはGnRH アゴニストまたはrhCG 250ug、hCG 3000-10000 IU

≪私見≫

PPOSは、40歳前後のAMH 0.7ng/ml程度の卵巣予備能低下女性に対してマイルド刺激と同等の生殖医療成績であり、早発 LH サージ抑制をより抑制する有効な方法であることが示されました。
今回の症例では除外基準として子宮内膜症III-IV期、子宮腺筋症、卵巣手術歴が除外されています。特に内膜症などで卵巣予備能が低下している女性にPPOSがよいのか、マイルド刺激がいいのかわかってくると、より患者様に適した治療を提供できるかと思っています。

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文責:川井清考(院長)

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