卵巣予備能低下群に黄体期卵巣刺激はどう?(論文紹介)
卵巣予備能低下群に黄体期卵巣刺激が一般的な月経中の卵巣刺激と比べてどうなのかを検討した論文をご紹介します。
≪論文紹介≫
Joaquín Llácer, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2020. DOI: 10.1186/s12958-020-00570-7
ボローニャ基準を満たす卵巣予備能低下女性を対象に、黄体期卵巣刺激と通常卵巣刺激を比較した単施設前向き無作為化試験で主要評価項目は回収成熟卵子数としています。
結果:
60名の女性が参加し、黄体期卵巣刺激 を27名、通常卵巣刺激を 30名に実施しました。両群での回収成熟卵子数には差がありませんでした(黄体期卵巣刺激 2.1±2.0 vs. 通常卵巣刺激 2.6±2.2、p=0.31)。刺激期間も両群で同様でした(黄体期卵巣刺激 8.35±2.8日vs. 通常卵巣刺激 8.15±4.1日、p=0.69)。FSH総投与量、回収卵子数、卵子生存率、正常受精率、キャンセル率にも両群間で有意な差はありませんでした。
結論:
黄体期卵巣刺激は通常卵巣刺激と同等の有効性があることがわかりました。
刺激法はFSH225単位アンタゴニスト法を採用しています。黄体期スタートはLH+4、通常刺激は月経2-3日目より卵巣刺激開始しています。スペインで2016年2月から2017年12月に体外受精を行なったボローニャ基準を満たし、女性年齢<41歳、21~35日の定期的な月経周期をみたし、少なくとも1回の前周期で回収卵子数が4個未満の女性を対象としました。
≪私見≫
当院では特殊な例(がん・生殖や早発卵胞発育症例など)を除き治療期間短縮のために卵巣予備能低下女性に対して黄体期卵巣刺激を積極的には行っていません。
ただし、卵巣機能不全患者の黄体期卵巣刺激は今回の結果をみても悪い印象は受けませんし、過去の報告でも黄体期卵巣刺激で回収した卵子は胚盤胞到達率、胚異数性、妊娠率、生児出産率、周産期合併症、奇形率などが増悪することがない(Cimadomo D, et al. Hum Reprod. 2018. Chen H, et al. Fertil Steril. 2015)とされていますので、症例を選び実施を検討してみてもよいかもしれません。
文責:川井清考(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。