凍結融解胚移植の内膜調整(排卵周期 vs. HRT)における妊娠比較(Medicine (Baltimore). 2020)

【はじめに】

凍結融解胚移植には子宮内膜調整がとても重要になります。排卵周期とホルモン補充周期(HRT)ですが、これらの有効性の比較研究には様々な見解があります。明確に違いとして認められているのは妊娠高血圧症候群の発生率のみで、胚移植成績では大きな差が認められていません。ご紹介させていただく報告は2回連続でHRT凍結融解胚移植に失敗した患者の3回目の移植において、NCとHRTの妊娠率を比較した観察研究です。

【ポイント】

2回連続のホルモン補充周期による胚移植に失敗した後の3回目では、排卵周期でもホルモン補充周期でも臨床妊娠率に有意差は認めませんでした。

【引用文献】

Conghui Pang, et al. Medicine (Baltimore). 2020 Sep 11;99(37):e22163. doi: 10.1097/MD.0000000000022163.

【論文内容】

2回連続でHRT周期下凍結融解胚移植に失敗した患者において、3回目の移植を排卵周期とHRTに分け、両群の妊娠率、特に臨床的妊娠率を比較することを目的としたレトロスペクティブ研究です。中国生殖医療センターにおいて、2015年1月から2018年9月に実施された174症例を対象としました。対象者はすべて規則的な月経のある不妊患者で、2回連続でHRT周期下凍結融解胚移植不成功後、3回目の凍結融解胚移植を計画していました。3回目の治療は内膜調整のために排卵周期またはHRTを使用し、すべての胚は同一の採卵周期で得られたものでした。内膜調整方法に基づいて患者を分類し、98例が排卵周期、76例がHRTに分類されました。
結果:
黄体ホルモン投与開始日における排卵周期群のエストロゲンレベルと内膜厚は、HRTと比較して有意に高値でした。しかし、生化学的妊娠率、臨床的妊娠率、累積妊娠的率、流産率、多胎妊娠率、異所性妊娠率、または生児出生率には両群間で有意差は認められませんでした。二項回帰分析の結果、内膜調整プロトコルの違いは臨床妊娠率に有意な影響を与えないことが結論づけられました。2回のHRT周期下凍結融解胚移植反復着床不全では、排卵周期はホルモン補充周期と同様に有効であることが示されました。

【私見】

研究として、2回のHRT周期下凍結融解胚移植反復着床不全では、排卵周期はホルモン補充周期を上回る生殖予後が出たら面白かったのですが、差は認められませんでした。
どうしても、片方だけハマって妊娠する!というのは臨床的経験からは感じることがあるのですが、なかなか実証した報告がないのも実情です。今回の2回のHRT周期下凍結融解胚移植反復着床不全というのは臨床的妊娠にいたらなかった症例となっていますので、生化学的妊娠は含まれています。今回の報告は排卵周期、HRTともに黄体補充は比較的しっかりおこなっています。

下記も参考にしてみてください。
凍結融解胚移植は妊娠高血圧症候群のリスク因子である(論文紹介)
排卵周期とホルモン補充周期の凍結融解胚移植予後(レトロスペクティブコホート 2022)
排卵周期/ホルモン補充周期凍結単一胚盤胞移植の成績(レトロスペクティブコホート.2023)

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文責:川井清考(院長)

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