排卵周期とホルモン補充周期の凍結融解胚移植予後(レトロスペクティブコホート 2022)
凍結融解胚移植を実施する場合、排卵周期で行った方がホルモン補充周期と比較して着床率の増加、流産率の減少、またHDP、産後出血、癒着胎盤、妊娠糖尿病の発生の低下が期待できるのでは?という報告もでてきています。症例ごとに患者様のニーズに応じて使い分ける必要があると思いますが、国内の単一施設からの大規模症例報告がでてきましたのでご紹介いたします。
≪ポイント≫
妊娠高血圧症候群、癒着胎盤、帝王切開分娩、早産、低出生体重児のリスクは、ホルモン補充周期で自然周期より高かったが、先天性異常のリスクは両周期で同程度であった。これらのリスクを調査し、別の子宮内膜準備法を検討するために、さらなるフォローアップが必要である。
≪論文紹介≫
Kazumi Takeshima, et al. AJOG Glob Rep. 2022 Aug 7;2(4):100081. doi: 10.1016/j.xagr.2022.100081.
2008年1月から2017年12月に周産期成績と先天性異常を自然周期とホルモン補充周期で凍結融解胚移植予後を合計67,018周期(ovu 4.5:29,705周期、ovu 5.0:31,995周期、ホルモン補充周期:5318周期)でレトロスペクティブに比較しました。自然周期における凍結融解胚盤胞移植は排卵時期により、排卵後4.5日目(ovu 4.5)と5日目(ovu 5.0)の2パターンに分類しています。
結果:
ホルモン補充周期は排卵周期と比較して、妊娠高血圧症候群(aOR 2.16、95% CI 1.66-2.81)および癒着胎盤(aOR 4.14、95% CI 1.64-10.44)の増加と関連していました。帝王切開分娩(aOR 1.93、95% CI 1.78-2.18)、早産(aOR 1.55、95% CI 1.25-1.93)、低出生体重(aOR 1.42、95% CI 1.18-1.73)リスク上昇も認めました。先天性異常リスクは認められませんでした。
≪私見≫
施設により排卵周期とホルモン補充周期の凍結融解胚移植をどちらから始めるか、症例の偏りはどうかなどの違いがありますが、さまざまな角度から患者様が妊娠・出産に至る過程、そして周産期予後を意識した治療選択を複数もっていくことが必要であると考えています。
排卵周期 ovu 4.5 | 排卵周期 ovu 5.0 | ホルモン補充周期 | |
分娩数 | 9626 | 9970 | 1482 |
周産期合併症(症例数と割合) | 916 (9.5) | 997 (10.0) | 190 (12.8) |
HDP(症例数と割合) | 287 (3.0) | 331 (3.3) | 81 (5.5) |
妊娠糖尿病(症例数と割合) | 341 (3.5) | 386 (3.9) | 62 (4.2) |
HELLP症候群(症例数と割合) | 14 (0.2) | 10 (0.1) | 3 (0.2) |
前期破水(症例数と割合) | 29 (0.3) | 27 (0.3) | 6 (0.4) |
低置胎盤(症例数と割合) | 75 (0.8) | 63 (0.6) | 8 (0.5) |
前置胎盤(症例数と割合) | 149 (1.6) | 175 (1.8) | 24 (1.6) |
癒着胎盤(症例数と割合) | 14 (0.2) | 12 (0.1) | 7 (0.5) |
常位胎盤早期剥離(症例数と割合) | 30 (0.3) | 27 (0.3) | 4 (0.3) |
文責:川井清考(院長)
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