自然周期/レトロゾール周期採卵における分割期新鮮胚移植成績(レトロスペクティブコホート 2022)
海外では調節卵巣刺激が主流ですので、内服のみの卵巣刺激にての体外受精予後のデータはあまりありません。自然周期/レトロゾール周期採卵における分割期新鮮胚移植成績を調査したビッグデータをご紹介いたします。
≪ポイント≫
自然周期とレトロゾール周期新鮮胚移植において、周産期合併症、在胎週数、出生時体重、SGA児、LGA児、先天性異常に差を認めませんでした。
≪論文紹介≫
Kazumi Takeshima, et al. F S Rep. 2022 Mar 6;3(2):138-144. doi: 10.1016/j.xfre.2022.03.001.
2008年1月から2017年12月に都内クリニックにおいて新鮮初期胚移植時に自然周期とレトロゾール周期にて新鮮初期胚移植時の生殖医療結果、周産期予後を比較したレトロスペクティブ・コホート研究です。自然周期とレトロゾール周期における採卵を実施し、採卵後2(3)日目に新鮮胚移植を実施しました。黄体補充はジドロゲステロン 30 mg/日をおこなっています。評価項目は周産期合併症と先天性異常としました。
結果:
自然周期とレトロゾール周期新鮮胚移植において、周産期合併症、在胎週数、出生時体重、SGA児、LGA児、先天性異常に差を認めませんでした。女性年齢、BMI、不妊原因、2cell割球数とグレード、移植日の子宮内膜厚、胎児性別で多変量解析を実施した95% CIは以下の通りです。HDP 95% CI 0.896 (0.464–1.732)、妊娠糖尿病 95% CI 0.966 (0.459–2.032)、HELLP症候群 95% CI 1.365 (0.112–16.598)、前期破水 95% CI 0.869 (0.085–8.832)、低置胎盤 95% CI 0.510 (0.060–4.325)、前置胎盤 95% CI 0.223 (0.038–1.300)、常位胎盤早期剥離 95% CI 1.442 (0.249–8.369)、帝王切開率 95% CI 0.778 (0.595–1.018)、早産 95% CI 1.299 (0.815–2.068)、低出生体重児 95% CI 1.217 (0.818–1.807)、SGA児 95% CI 1.373 (0.863–2.185)、LGA児 95% CI 3.817 (0.244–32.418)、Birth defect 95% CI 1.255 (0.706–2.232)。
≪私見≫
この報告は都内大手クリニックの10年間のデータの集積です。自然周期採卵新鮮胚移植群10,274周期(女性年齢 36.2歳)、レトロゾール周期採卵新鮮胚移植群1,323周期(女性年齢 33.1歳)のデータで臨床妊娠率はそれぞれ40.4%、50.5%でした。周産期予後比較は自然周期採卵新鮮胚移植群2,847名(女性年齢 34.4歳)、レトロゾール周期採卵新鮮胚移植群511名(女性年齢 32.6歳)での比較検討です。
採卵はLHサージが出ていない場合は34-36時間後採卵、血清LH 10– 20 mIU/mLの場合は30時間後採卵とし、ICSIは4時間後に実施しています。
文責:川井清考(院長)
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