40歳以上のART累積出生率(Sci Rep. 2024)
女性の高齢化は体外受精成績を低下させます。卵巣予備能低下による回収卵子数の低下、胚盤胞到達率の低下、胚盤胞になったとしても異数性割合の増加などが顕著となります。
国内のARTレジストリデータは移植した年齢で層別化されており、卵子を回収した年齢ではありません。また、PGT胚もふくまれています。一番大きな課題は、患者あたりの累積出生率を算出できていない点です。
PGTを実施しない高齢女性での2年間体外受精治療を行なった場合の累積出生率を示した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
国内施設でのPGT-Aを行わず凍結融解胚移植を行った場合の2年間の累積生児出産率は、それぞれ40歳、41歳、42歳、43歳、44歳、45歳、≧46歳の患者で、55.6%、39.0%、31.3%、19.1%、10.6%、4.4%、0%でした。
≪論文紹介≫
Sakiko Nukaga, et al. Sci Rep. 2024 Oct 22;14(1):24814. doi: 10.1038/s41598-024-74460-y.
40歳以上女性を対象に、着床前遺伝子診断(PGT-A)を行わずに凍結融解胚移植を行うことの妥当性を評価することを目的とし、累積出生率と出生あたりの費用を明らかにすることを目的としました。2010年1月から2017年9月に初回採卵を実施した40歳以上の患者1,011名を対象としました。患者は最長2年間、または治療中止または妊娠/出産のいずれかが生じるまで追跡調査されました。2年間の累積出生率は、それぞれ40歳、41歳、42歳、43歳、44歳、45歳、46歳以上の患者で、55.6%、39.0%、31.3%、19.1%、10.6%、4.4%、0%でした。出生症例の約8割は、40~42歳および43~44歳の患者はそれぞれ4回目と2回目の移植で妊娠に至りました。40歳、41歳、42歳、43歳、44歳の患者の費用はそれぞれ、30,207ドル、49,034ドル、66,345ドル、102,759ドル、195,862ドルでした。
40歳 | 41歳 | 42歳 | 43歳 | 44歳 | 45歳 | 46-48歳 | |
初期胚移植割合 | 74.2 | 75.2 | 77.8 | 79.4 | 82.8 | 91.3 | 89.8 |
胚盤胞移植割合 | 25.8 | 24.8 | 22.2 | 20.6 | 17.2 | 8.7 | 10.2 |
平均移植あたり胚個数 | 1.7 | 1.7 | 1.7 | 1.8 | 1.8 | 1.8 | 1.9 |
平均患者あたり胚個数 | 5.7 | 6.4 | 6.9 | 5.8 | 6 | 4.2 | 4.1 |
出生率(採卵あたり) | 2.9 | 2.1 | 1.6 | 1.2 | 0.7 | 0.4 | 0 |
出生率(胚あたり) | 9.7 | 6.1 | 4.6 | 3.3 | 1.8 | 1.1 | 0 |
出生率(移植あたり) | 16.1 | 10.4 | 8 | 5.8 | 3.2 | 1.9 | 0 |
出生率(患者あたり) | 55.6 | 39 | 31.3 | 19.1 | 10.6 | 4.4 | 0 |
≪私見≫
不妊治療施設によって治療法は様々ですが、納得いく結果だと思います。
事前確率として、治療を始める前に伝えていく事実なのだと感じています。
治療はやってみないとわからない、確かにその通りですが、ここは医療を提供する側、受ける側の価値観・治療の求める対価によって異なってくるのだと思います。
45歳以上の体外受精治療は有効ではないのか・・・(論文紹介)
40歳以上の人工授精のレビュー報告(論文紹介)
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文責:川井清考(院長)
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