妊娠初期PEスクリーニングの早産との関連(Am J Obstet Gynecol. 2024)
FMFが提供する「妊娠初期のPEスクリーニング」は母体特徴、既往歴、平均動脈圧、子宮動脈-PI、血清PlGFを用いて1/〇〇〇という形で結果が出てきます。当院でもハイリスク妊娠女性にはFMF胎児クリニック東京ベイ幕張にご紹介しています。
妊娠初期のPEスクリーニングの妊娠高血圧症候群以外に与える影響を調査した二次報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
FMFの妊娠初期PEスクリーニングは早産率にも相関しそうです。
≪論文紹介≫
Paolo I Cavoretto, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024 Oct;231(4):452.e1-452.e7. doi: 10.1016/j.ajog.2024.01.008.
SPREE研究の対象となった16,451名の妊娠のうち、陣痛発来し分娩に至った10,820名を対象とし、妊娠初期PEが妊娠高血圧症候群なしに自然分娩に至った妊娠週数を調査した報告です。妊娠初期PEリスクに応じて、以下のとおり3つのグループに分類しました(グループ1:低リスク(1/100未満)、グループ2:中間リスク(1/50~1/100)、グループ3:高リスク(1/50以上))。
結果:
グループ1には9,795名、グループ2には583名、グループ3には442名が含まれていました。在胎週数28週未満、32週未満、35週未満、37週未満、40週未満での分娩は、それぞれグループ1では0.29%、0.64%、1.68%、4.52%、44.97%でした。グループ2ではそれぞれ0.69%、1.71%、3.26%、7.72%、55.23%、グループ3ではそれぞれ0.45%、1.81%、5.66%、13.80%、63.12%でした。
コックス回帰分析では、中程度リスク群を低リスク群と比較した場合には自然分娩が18%増加(P<.001)、高リスク群を低リスク群と比較した場合には自然分娩が41%増加することが示されました(P<.001)。
≪私見≫
この報告の重要な知見が二つ挙げられています。
妊娠期間は妊娠初期PEリスクが高まるにつれて短縮したこと、PE高リスク群と低リスク群を比較すると、陣痛発来割合は妊娠24-26週で約4倍、妊娠28-32週で3倍、 32-34週の妊娠では3倍、34-39週の妊娠では2倍となり、40週以降では同等となることです。
胎盤機能不全を予測しているわけなので当然の結果と言われると当然の気がします。高リスク群には、定期的な子宮頸管長スクリーニングと適時のプロゲステロン投与を推奨するとされていますが、ここまではやり過ぎの気もします。
不妊治療のゴールは妊娠・出産だけではなく、より合併症の少ない、もしくは合併症がある場合は少しでも母児への負担少なく分娩を目指すことだと思っています。FMF胎児クリニック東京ベイ幕張は妊娠初期スクリーニングがハイリスク妊娠女性だけではなく全妊娠女性が受けるべきという考え方に賛同しています。あとは費用対効果と検査へのアプローチがしやすい環境が整うこと、検査意義について話せる医療者が増えることかなと考えています。
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文責:川井清考(院長)
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