自己妊活のための様々なアプリ・機材(Am J Obstet Gynecol. 2024)

女性向けテクノロジー(フェムテック:Femtech)に対する消費者の関心、投資、科学的イノベーションが相まって急成長している分野です。これらに対して自己妊活で用いられる様々なアプリ・機材はどのように展開されているか、米国で調査されまとめられた総説をご紹介いたします。

≪ポイント≫

自己妊活のための様々なアプリ・機材は様々ありますが、現在のところ基礎体温・尿中代謝物を中心としたものがメインでイノベーティブな科学的発見があるわけではありません。デバイスは使いやすさを最優先し、非侵襲的なセンシングを通じて、代替バイオマーカーや排卵検出方法を継続的に探索し、AI技術を用いて精度・感度を上げていくことが今後期待されます。

≪論文紹介≫

Sarah C Cromack, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024 Nov;231(5):516-523. doi: 10.1016/j.ajog.2024.05.028.

自己妊活のための様々なアプリ・機材は米国市場で合計7つのウェアラブルと16のデバイスが特定されました。特定された技術のほとんどは、尿中LHサージを排卵前に検出する方法、基礎体温を用いた方法であり、腟分泌物を用いたものが一商品ありました。
ウェアラブルはリング型、リストバンド型、腟内挿入型、パッチ型など、さまざまな形状があり、スマートフォン用アプリケーションと同期させるものが多いです。
尿中のホルモンを測定するものには、LH や、エストラジオールやプロゲステロン代謝物などのホルモンを用いています。取り込み方やデータの返し方は様々で、商品によって異なるようです。一社の腟分泌物分析は電気インピーダンスと電解質組成を分析して妊娠しやすい時期を検出しているようです。
どの研究も小規模前向きコホートがほとんどで、民族性や対象患者背景が様々であり、質が高い研究はほとんどありません。

≪私見≫

私個人としては、自己妊活で妊娠できる人は通院の必要がないと思っています。
当たり前のことなんですが、自己妊活で妊娠できる人とは、「不妊原因がないこと、もしくは治癒したひと」で不妊治療の年齢要素などの緊急性がなくタイミング療法で妊娠に至れるひとと考えています。このような方には自己妊活のための様々なアプリ・機材を有効活用してほしいと思っていますが、使いやすいこと、費用負担が少ないことが優先事項と考えています。もちろん、タイミング治療が自己妊活より安心材料になる方は通院治療を否定しているわけではありませんが、患者様にとってどちらを求めるか、なのだと思っています。

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文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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