生殖補助医療は胎盤遺残と関連(Fertil Steril. 2024)

胎盤遺残(RPOC:retained products of conception)は、人工妊娠中絶や正常分娩後に子宮内に残った胎盤遺残物として定義され、正期産分娩の約1%を合併します。胎盤遺残と生殖補助医療の関連が指摘されており、今回、国内ARTレジストリにおける調査報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

ホルモン補充周期凍結融解胚移植、アシステッドハッチングが国内ART登録では、胎盤遺残リスクとなっていました。

≪論文紹介≫

Seung Chik Jwa, et al. Fertil Steril. 2024 Mar;121(3):470-479.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.11.028. 

生殖補助医療に関連する分娩後の胎盤遺残リスクを評価することを目的とした日本ARTレジストリを用いたレトロスペクティブコホート研究です。2007年から2017年の間に新鮮胚移植と凍結融解胚移植を行った369,608周期の単胎生児生産の周期別データを日本ART登録から入手しました。
主要評価項目は 分娩後の胎盤遺残リスクとしました。
結果:
132周期(0.04%)の分娩で胎盤遺残が認められました。これらのうち122件(92.4%)は凍結融解胚移植で発生していました。胎盤遺残を有する症例は、有さない症例に比べて経腟分娩が多くなっていました(78.0% vs.61.1%)。また、癒着胎盤を合併している症例も多くありました(24.2% vs. 0.45%)。凍結融解胚移植実施患者において、胎盤遺残リスクと関連する因子は、胚のグレード、ホルモン補充周期、アシステッドハッチングでした。ホルモン補充周期は最大リスク因子であり(aOR 4.9;95%CI 2.0-12.4)、ホルモン補充周期凍結融解胚移植後の妊娠・分娩の0.05%(97958周期中51件)に胎盤遺残がみられましたが、排卵周期凍結融解胚移植後の妊娠・分娩では0.01%(47,079周期中5件)にとどまりました。
サブグループ解析では、ホルモン補充周期とアシステッドハッチングは、PCOSと無排卵周期を除いた経腟分娩症例では胎盤遺残リスクとなりました。新鮮胚移植では、回収卵子数増加が胎盤遺残の唯一のリスクでした。

≪私見≫

私たちも第2子ご希望で患者様が戻って来られた場合、大小は様々ですが、一定頻度では見かけることが多いです。絨毛は胚が内膜に対峙・接着、浸潤した後 子宮筋層内1/3まで侵入します。この過程に異常が生じると、癒着胎盤・胎盤位置異常なども生じるわけですので、胎盤遺残も一連で起こると考えるのは当然なのかもしれません。

絨毛・胎盤遺残の手術方法は(その1:Fertil Steril. 2023)
絨毛・胎盤遺残の手術方法は(その2:JAMA. 2023)

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文責:川井清考(院長)

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