絨毛・胎盤遺残の手術方法は(その2:JAMA. 2023)
挙児希望の14週未満の不全流産・絨毛遺残(RPOC)の女性に対して、内膜掻爬術(吸引法)もしくは子宮鏡下RPOC除去術が、その後の妊娠に対して好ましいかどうか比較検討した報告をご紹介いたします。
絨毛・胎盤遺残の手術方法は(その1:Fertil Steril. 2023)と共に参考にしてもらえたら幸いです。
≪ポイント≫
妊娠14週未満の不全流産・絨毛遺残(15mm以上)の女性に対しての内膜掻爬術(吸引法)もしくは子宮鏡下RPOC除去術は術後2年の妊娠継続率には大きな差を認めませんでした。
≪論文紹介≫
Cyrille Huchon., et al. JAMA. 2023 Apr 11;329(14):1197-1205. doi: 10.1001/jama.2023.3415.
内膜掻爬術(吸引法)もしくは子宮鏡下RPOC除去術が、その後の妊娠に対して好ましいかどうか比較検討したRCTです。
2014年11月6日から2017年5月3日に574症例をリクルートし、2年間のフォローアップとしたフランス15病院で18~44歳の不全流産・絨毛遺残に対する手術を行う女性を1:1の割合で無作為に割り付けました。
内膜掻爬術(吸引法):286症例もしくは子宮鏡下RPOC除去術:288症例とし、評価項目は2年間フォロー期間中の22週までの妊娠継続としました。
結果:
intention-to-treat解析では、563名の女性(平均年齢[SD]、32.6[5.4]歳)が対象としました。子宮鏡下RPOC除去術が完遂できなかった症例は19名(7%)であり、そのうち18名は内膜掻爬術(吸引法)に変更されました(8名:完全切除不能、7名:可視化不十分、2名:麻酔合併症、1名:機器故障)。1名の子宮鏡検査は、子宮頸管拡張中の穿通と行ったため中止となりました。
2年間の追跡中に、子宮鏡下RPOC除去術群では177例(62.8%)、内膜掻爬術(吸引法)群では190例(67.6%)が妊娠継続にいたりました(差、-4.8%[95%CI、-13%~3.0%];P = 0.23)。time-to-event解析では、主要転帰について群間差は認められませんでした(ハザード比、0.87[95%CI、0.71~1.07])。手術時間と入院期間は子宮鏡下RPOC除去術群が有意に長くなりました。引き続き起こる流産、異所性妊娠、外科的合併症(Clavien-Dindo分類グレードIII以上)、および再手術割合は差がありませんでした。
≪私見≫
この試験はHY-PER trial (Evaluation de l’efficacité de l’HYsteroscopie dans la Prise En charge de Rétentions trophoblastiques intra- utérines [Effectiveness of Hysteroscopy in the Treatment of Intrauterine Trophoblastic Retentions])と命名されています。フランス語なのでわかりづらいですね。
per-protocol解析でも同様の結果となっています。
Clavien-Dindo分類は、外科的合併症の重症度を評価するためのシステムです。この分類は、外科的手術後の合併症を客観的かつ一貫性のある方法で評価するために、Pierre ClavienとDaniel Dindoによって開発されました。
グレードI:特別な治療を必要としない軽度の合併症
グレードII:薬物治療(抗生物質や輸血を含む)を必要とする合併症
グレードIII:外科的、内視鏡的、放射線学的介入が必要な合併症
IIIa:生命を脅かさない介入
IIIb:生命を脅かす可能性のある介入
グレードIV:ICUでのケアが必要な生命を脅かす合併症
IVa:単一臓器不全
IVb:多臓器不全
グレードV:患者死亡
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文責:川井清考(院長)
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