絨毛・胎盤遺残の手術方法は(その1:Fertil Steril. 2023)
絨毛・胎盤遺残(RPOC: Retained products of conception )、は17妊娠に1回ほど起こるとされています。(Golan A., et al. J Minim Invasive Gynecol. 2011)
待機療法や薬物療法で改善しない場合は手術を行うことになります。
手術療法として、内膜掻爬術もしくは子宮鏡下RPOC除去術が選択肢となってきます。手術の合併症として、出血、子宮穿孔、感染、子宮腔内癒着があり、子宮鏡下RPOC除去術の方が目視下に病変部分のみを除去してくるため、合併症が子宮腔内癒着は少ないのではとされています。ただ、比較検討したRCTがおおくないためご紹介させていただきます。
≪ポイント≫
絨毛・胎盤遺残は内膜掻爬術(電動吸引法)よりも子宮鏡下RPOC除去術で完全に除去されることが多く、子宮鏡下RPOC除去術群では追加の子宮鏡治療が少なくなりました。
≪論文紹介≫
Liselot P Wagenaar., et al. Fertil Steril. 2023 Dec;120(6):1243-1251. doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.08.956.
RPOCでの内膜掻爬術(電動吸引法)もしくは子宮鏡下RPOC除去術における子宮腔内癒着形成・有効性・合併症を比較検討したランダム化比較非盲検試験です。2015年4月から2022年6月に4施設で行われました。
超音波で1~4cmのRPOCを認めた133症例を、内膜掻爬術(電動吸引法)もしくは子宮鏡下RPOC除去術に無作為に割り付けました。
妊娠終了後最低6週間後に診察室での診断用子宮鏡検査で診断され、妊娠終了後最低8週間後に手術を実施しました。術後、セカンドルック子宮鏡検査が予定しました。
結果:
術後子宮腔内癒着は、子宮鏡下RPOC除去術群では14.3%(9/63)、内膜掻爬術(電動吸引法)群では20.6%(13/64例)に認めました(-6%[-19.1%~7.1%])。子宮鏡下RPOC除去術群では内膜掻爬術(電動吸引法)群に比べ、RPOCの完全除去が95.2% vs. 82.5%と有意に多く(-14%[-24.9%~-3.1%])、追加の子宮鏡手術が必要な割合は子宮鏡下RPOC除去術群(12.5%)では内膜掻爬術(電動吸引法)群(31.3%)に比べ少なくなりました(-20.1%[-34.3%~-6%])。手術時間の中央値は、子宮鏡下RPOC除去術群と比較して内膜掻爬術(電動吸引法)群の方が短くなりました(5.80分 vs 7.15分)。術中合併症および術後合併症の発生については、子宮鏡下RPOC除去術と内膜掻爬術(電動吸引法)に差はみとめませんでした(それぞれ5.5% vs. 5.0%、2.7% vs. 1.3%)。
≪私見≫
合併症として 術中500mL以上の出血、手術手技による穿孔が5%程度で行っていますので、しっかり術前に説明しておくことが必要です。合併症が多いのは、妊娠終了後8週間と早い時期での手術である可能性は否定できないかなと感じています。 当院でもPROCに関しては、子宮鏡下RPOC除去術を外来で行っておりますが、リスクが高いと判断した症例では紹介し入院手術を提案しています。
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文責:川井清考(院長)
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