アシステッドハッチング効果は眉唾?(Fertil Steril. 2024)

体外培養や凍結などの人工的な条件では、透明帯が変化し硬化して、孵化プロセスが変化し着床に影響を与えると考えられており、以前よりアシステッドハッチングが生殖補助医療には導入されています。アシステッドハッチングは物理的切断や薬液による方法が提案されていましたが、レーザーシステムが主流となってきています。
ただ、アシステッドハッチングは慣習的に行われている感もあり効果に疑問視する意見は多々あります。ESHREのgood practice recommendations for add-ons in reproductive medicineでは推奨されておらず、Cochrane reviewでも生児出生率に影響を及ぼさないことをされています。
 K. Lundin, et al. Hum Reprod, 38 (2023), pp. 2062-2104
 L. Lacey, et al. Cochrane Database Syst Rev, 3 (2021), p. CD001894
5-7日目凍結胚盤胞に対するアシステッドハッチングが生殖予後を改善するかどうかの多施設ランダム化比較試験をご紹介いたします。

≪ポイント≫

アシステッドハッチングが生殖予後を改善させる可能性は乏しそうです。ただ、一定条件下では有効である可能性が未だ否定できないサブグループ解析の結果となっています。

≪論文紹介≫

Alessandra Alteri, et al. Fertil Steril. 2024 Jul;122(1):106-113. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.02.010.

5-7日目凍結胚盤胞に対するアシステッドハッチングが生殖予後を改善するかどうかを2施設で検討したランダム化比較試験:ALADDIN(pArtiaL zonA pelluciDa removal by assisteD hatchINg of blastocysts)です。
2018年9月から2021年11月に、18~39歳で体外受精周期、単一凍結融解胚盤胞移植を実施する患者をリクルートしました。子宮因子、BMI >35、重度の男性不妊、PGT実施症例は除外しました。アシステッドハッチング群は、1,480nmダイオードレーザーを用い、1~5時の位置から0.2msパルスを連続的に照射し、透明帯の約3分の1を除去しました。主要評価項目は出生率とし、副次評価項目は臨床的妊娠、流産、多胎妊娠、早産、産科合併症、新生児合併症、先天異常としました。
結果:
698名が組み入れ基準を満たし、ランダム化(352名アシステッドハッチング群、346名対照群)しました。生児出産したのはそれぞれ105名(29.8%)と101名(29.2%)でした。アシステッドハッチング群における生児出生の相対リスクは1.02(95%CI、0.86-1.19)でした。2施設間、女性年齢、体外受精適応、受精方法、胚盤胞グレード、胚盤胞凍結日でサブグループ解析を行いましたが、明確な有意差をつく結果にはなりませんでした。

≪私見≫

体外受精による体外培養・凍結などの手技は透明帯効果を引き起こす可能性があるが、胚が透明帯から脱出するのを邪魔して臨床成績をおとすほどではなさそうである、というのが現在までの結論ではないでしょうか。 サブグループ解析の結果がサプリメントデータにのっています。ここの解釈は面白くて、年齢が高い女性、胚盤胞グレードが高い場合、媒精>顕微授精におけるアシステッドハッチングがfavorableである可能性を秘めた結果となっています。また、施設間差もありそうです。

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文責:川井清考(院長)

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