HRT周期の黄体補充は経口?経腟?注射?(Reprod Biomed Online. 2022)

ホルモン補充周期の黄体補充は経腟プロゲステロンがメインになりますが、経口薬・注射との成績差がどうなのでしょうか。過去にもたくさんの比較試験はでていますが、この論文は比較的若年女性を対象としたものであること、通常の投与より全ての薬剤を多い投与量で設定した場合の比較となっていて着眼点が面白いRCTです。

≪ポイント≫

HRT周期の黄体補充は経口・経腟・注射とも、十分量投与すれば生殖医療成績に差がなさそうです。

≪論文紹介≫

Emre Pabuccu, et al. Reprod Biomed Online. 2022 Dec;45(6):1145-1151. doi: 10.1016/j.rbmo.2022.06.027.

ホルモン補充周期凍結融解胚盤胞移植1-2個151名に対して黄体補充を下記3群に割り付けたRCTです。
① 経口群:ジドロゲステロン(DYD)、1日総投与量40mg(n=52)
② 8%プロゲステロン膣ゲル(VAG)、1日総投与量180mg(n=55)
③ 筋肉内プロゲステロン注射(IMP)、1日総投与量100mg(n=44)5日間のプロゲステロンサポートの後、1個または2個のガラス化加温胚盤胞を移植しました。
結果:
患者背景や胚質は各群とも同様でした。妊娠継続率(DYD群40.4%、VAG群38.2%、IMP群45.5%、P = 0.76)および生児獲得率(DYD群40.4%、VAG群38.2%、IMP群43.2%、P = 0.61)は差がありませんでした。生化学妊娠および流産率も差を認めませんでした。中等度から重度の副作用が起きる女性は、IMP群で他の群より有意に多い結果となりました(P < 0.001)。

≪私見≫

油性プロゲステロン注射薬は速やかに吸収され約2時間後に高い血清プロゲステロン濃度に達します。筋肉内注射は、疼痛、腫脹、感染、膿瘍、アレルギー反応などの副作用を伴うことがあるので、症例を選んで行なっていくことが重要だと考えます。

過去の関連ブログも参考になさってください。
ホルモン補充周期凍結融解胚移植の黄体補充は膣剤+内服がよい?(論文紹介)
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文責:川井清考(院長)

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