大豆摂取と卵巣予備能の関係(EARTH study)

ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテインなどのイソフラボンは主に大豆に含まれ、他の豆類にはあまり含まれていません。イソフラボンの特徴は、内因性エストロゲンと構造的・機能的に類似していて、植物性エストロゲンと呼ばれています。植物性エストロゲンは、エストロゲン受容体α、βとの相互作用が弱いですが、動物実験では生殖能力に影響を与える可能性が示唆されています。
ヒトの研究では大豆摂取量と生殖機能に関しては一貫した結果がでていません。
今回、大豆・イソフラボン摂取と卵巣予備能の関連をみた報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

大豆・イソフラボン摂取は過剰摂取をしないかぎり、胞状卵胞数、AMH、FSHなどの卵巣予備能との関連はなさそうです。

≪論文紹介≫

Makiko Mitsunami, et al. Fertil Steril. 2023 Mar 3;S0015-0282(23)00172-3.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.02.039.

大豆食品およびイソフラボンの摂取量と卵巣予備能との関連性を検討した報告です。2007年から2019年に不妊治療センターに来院したカップルを対象に行ったEnvironment and Reproductive Health (EARTH) Studyによる横断研究です。667名が大豆食品の摂取量を報告し、卵巣予備能評価を行いました。ベースライン時に過去3ヶ月間の15種類の大豆由来食品の摂取量を取得し、これらの報告からイソフラボンの摂取量を推定しました。参加者は、大豆を摂取していない人を基準群として、大豆食品とイソフラボンの摂取量に基づき5群に分類しました。主要評価項目は胞状卵胞数とし、副次評価項目としてAMHとFSH値としました。すべて月経3日目に測定しました。
結果:
年齢中央値は35.0歳、大豆摂取量の中央値は0.09食/日、イソフラボン摂取量の中央値は1.78mg/日でした。胞状卵胞数、AMH、FSHは、粗解析では大豆摂取量と無関係でした。多変量解析において、大豆食品摂取量と胞状卵胞数、FSHとの関連は認められませんでした。しかし、大豆食品摂取量が最も多いカテゴリー群は、AMHが有意に低くなりました(-1.16、95% CI:-1.92〜-0.41)。大豆摂取量の異なるカットオフを用い、摂取量の最高2.5パーセンタイルの参加者の除外する調整後感度分析では、大豆摂取量は胞状卵胞数、AMH、FSHとの関連は認めませんでした。

≪私見≫

閉経前女性では、メタアナリシスにより大豆またはイソフラボンの摂取はエストラジオール、エストロン、SHBG濃度には影響しませんが、FSHとLHを減少[SMDにより約20%、P = 0.01 と 0.05]、月経周期が1.05日増加(95% CI 0.13〜1.97, 10研究)という報告もされています(Hooper L, et al. Hum Reprod Update.2009)。大豆・イソフラボンは生殖機能に良いと考え服用されている方が多いですが、摂取の生殖機能への良し悪しははっきりしていないので適量がよさそうですね。

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文責:川井清考(院長)

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