AMHは着床前診断正常胚の割合と無関係(レトロスペクティブ研究2023)

AMH値は低くても不妊原因やタイミング法・人工授精法の成績とは無関係であり、卵巣刺激をおこなった際の回収卵子数とのみ強く相関します。では、採れてきた卵子の正常胚の割合はどうでしょうか。PGT-A、PGT-Mで比較検討した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

PGT-A(不妊症患者)またはPGT-A+PGT-M(非不妊症患者)を実施した患者のコホートにおいて、AMHは胚の正常、モザイク、異数体の割合と関係しませんでした。

≪論文紹介≫

Yael R Stovezky, et al. Fertil Steril. 2023 Mar;119(3):444-453.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.11.018.

2012年3月から2020年6月に体外受精初回周期でPGT-AまたはPGT-A+PGT-Mを実施した1,000名の患者を対象としたレトロスペクティブ・コホート研究です。40歳以上の女性、新鮮胚移植を受けた患者は除外しました。
評価項目として周期あたりの胚の正常、モザイク、異数体の割合を評価しました。
結果:
不妊症患者(n = 926)と非不妊症患者(n = 214)は、AMH値に基づいて層別化し、低AMHはボローニャ基準に従って<1.1 ng/mLとしました。年齢調整した回帰モデルでは、不妊症患者と非不妊症患者において、AMHと正常、モザイク、異数体の割合に関係はありませんでした。不妊症コホートでは、35歳未満、35-37歳、38-39歳のサブグループ解析においてもAMHと正常胚率には関係はありませんでした。これらの所見は、不妊患者をAMH四分位群((-1.46 ng/mL、1.47–2.54 ng/mL、2.55–4.52 ng/mL、4.53–28.3 ng/mL))に層別化した感度分析でも差がありませんでした。

≪私見≫

A. Pipariら(Reprod Biomed Online. 2021)の報告と今回の報告は同様の結果です。相反する結果であったE.G. Jaswaら(Fertil Steril. 2021)の報告では、卵巣予備能が低い群が正常胚率が低下するとしています。まだまだ新しい論文が出てくると思いますので注視していきたいと思います。

文責:川井清考(院長)

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