PCOS女性は周産期リスクが上昇する(論文紹介)

PCOSは生殖年齢女性の約6〜15%が診断を受ける、比較的多い内分泌疾患です。
メタアナリシスやシステマティックレビューでは、PCOS女性は、周産期合併症のリスクが高まることが報告されていています。しかし、行楽因子が調整されていなかったり、症例数がすくなかったりすることでエビデンスの質が高いわけではありません。今回マサチューセッツ州のデータベースを用いて、周産期合併症がPCOS診断の有無でリスク変化するかどうかを検討した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

PCOS女性は、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、帝王切開のリスクが高くなりました。PCOS女性から出産された新生児は、低出生体重児、SGA児、早産、新生児入院期間の延長、生後1年以内の感染症および呼吸器疾患のリスクが高くなりました。

≪論文紹介≫

Hum Reprod. 2022 Sep 23;deac210.  doi: 10.1093/humrep/deac210. 

2013~2017年のマサチューセッツ州における18歳以上の女性の分娩を,病院退院,観察入院,救急部受診にリンクしたレコード、生殖医療記録(SART CORS)、請求データベース(APCD)にリンクさせました。
母親年齢、BMI、人種/民族、教育、出生年、高血圧、糖尿病について事前調整をおこないました。妊娠前BMI(25もしくは30カットオフ)、および不妊治療の有無をカテゴリー化しリスクを検討しました。
結果:
91,825分娩のうち、3.9%がPCOSと診断されていました。PCOS女性は非PCOS女性と比較して、妊娠糖尿病のリスクが51%高く(CI:1.38-1.65)、妊娠高血圧症候群のリスクが25%高い(CI:1.15-1.35)ことがわかりました。PCOS女性からの出生児は、非PCOS女性からの出生児と比較して、早産になりやすく(RR: 1.17, CI: 1.06-1.29 )、入院が長引く傾向がありました(RR: 1.23, CI: 1.09-1.40 )。妊娠前BMIが30未満女性でPCOS女性は非PCOS女性より発症リスクが上昇しました。

≪私見≫

過去にもアメリカのデータベースでPCOS女性の周産期予後を報告した内容をご紹介させいただきました。(PCOS患者の周産期予後(アメリカ910万妊婦のビックデータ解析)(論文報告)
様々な報告がありますので、今後も注視していきたいと思います。
Kjerulff LE, et al. Am J Obstet Gynecol 2011;204:558.e1–6.
Qin JZ, et al. Reprod Biol Endocrinol 2013;11:56.
Palomba S, et al. Hum Reprod Update 2015;21:575–592.
Yu H-F, et al. Medicine (Baltimore) 2016;95:e4863.
Gilbert EW, et al. Clin Endocrinol (Oxf) 2018;89:683–699.
Bahri Khomami M, et al. Obes Rev 2019;20:659–674.
Sha T, et al. Reprod Biomed Online 2019;39:281–293.

文責:川井清考(院長)

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