正常核型胚の場合、発育スピードは成績に影響する?(論文紹介)
現在まで正常核型胚の場合、胚発育スピードが生殖医療成績に影響を与えるかどうかは結論が分かれています。
- 生検日は生殖医療成績に影響しない(aCGH)
5日目胚の着床率48.8%、6日目胚の着床率51.2%
Capalbo A, et al. Hum Reprod. 2014;29(6):1173–81. - 生検日は生殖医療成績に影響しない(NGS)
5日目胚と6日目胚と比較し、着床率(OR 0.6 ; 95%CI 0.4-1.2)・出生率(OR 0.3; 95%CI 0.1-1.3) と有意差なし
Viñals Gonzalez X, et al. J Assist Reprod Genet. 2019;36(8):1623–9. - 生検日は生殖医療成績に影響する(aCGH)
5日目胚が6日目胚より成績がよい(着床率 44.6% vs. 66.7%、 生児獲得率44.8% vs. 60.4%)
Maxwell SM, et al. Fertil Steril. 2016;106(6):1414-1419.
今回NGSを用いた着床前診断で正常核型胚の場合、発育スピードが成績に影響することを報告した論文をご紹介します。
≪ポイント≫
複数の正常核型胚が確保できた場合には発育スピードが速い胚から優先的に移植することを推奨します。施設により生検する時期などは一定の見解がないため、施設別で検討していく方が現段階では無難かもしれません。
2015年10月から2022年2月までに、生殖医療施設にてNGSにて着床前診断を実施したレトロスペクティブコホートスタディです。主要評価項目は、生児獲得率とし、副次評価項目は継続妊娠率、着床率、流産率としました。
結果:
418名女性555周期の胚移植を対象としました。5日目に生検された正常核型胚は、6日目に生検された正常核型胚と比較して高い生児獲得率を示しました(62.3% vs. 49.6%;aRR 0.81, 95%CI 0.65-0.996 )。生検日および胚盤胞の質で層別化すると、Good胚盤胞、Fair胚盤胞、Poor胚盤胞の継続妊娠率、着床率、流産率は生検日(5日/6日)で差を認めませんでした。Good胚盤胞では5日生検より6日目生検より高い生児獲得率と示しました(74.3% vs. 51.3%;aRR 0.69, 95%CI 0.48-0.999)。Fair胚盤胞、Poor胚盤胞の生児獲得率は生検日(5日/6日)で差を認めませんでした。
胚のグループわけ | 胚盤胞の発育ステージ | ICM/TE Grade |
Good | Gardnerグレード 5 | AA, AB, BA, BB, AC, BC, CA, CB |
Gardnerグレード 4 | AA, AB, BA, BB, AC, CA | |
Gardnerグレード 3 | AA | |
Fair | Gardnerグレード 4 | BC, CB |
Gardnerグレード 3 | AB, BA, BB, BC, AC | |
Poor | Gardnerグレード 3 | CA, CB |
≪私見≫
着床前診断を実施しない場合は、発育スピードが速い形態良好胚が妊娠率・生児獲得率ともに高くなります。発育スピードは、染色体異数性をとらえているだけなのか、染色体異数性以外の細胞質などの評価マーカーとなっているのか結論がでていません。
私個人としては、生検するタイミングは施設施設によって異なるため、各施設での成績に応じて移植胚を選択していくのが好ましいと考えています。
文責:川井清考(院長)
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