異所性妊娠・帝王切開瘢痕部妊娠を体外受精で減らすには?(論文紹介)
体外受精と異所性妊娠(子宮外妊娠)についての質問を受けましたので、過去の報告をご紹介いたします。異所性妊娠既往がある患者さまが来院された場合は、下記の点に注意を払いながら治療計画を立てていくようにしています。
≪論文紹介≫
●凍結融解胚移植は新鮮胚移植に比べて異所性妊娠率が低い。
Londra L, Moreau C, et al. Fertil Steril. 2015;104:110–8.
●胚盤胞移植は分割期胚(初期胚)移植に比べて異所性妊娠率が低い。
Fang C, et al. Fertil Steril. 2015;103:655–61.
●hCGトリガーはGnRHaトリガーに比べて異所性妊娠率が低い。
Sahin S, et al. Arch Gynecol Obstet. 2015;291:185–91.
●内膜が薄いと異所性妊娠率が高い。
Hammoud AO, et al. Am J Obstet Gynecol. 2005;192:1370–5.
帝王切開瘢痕妊娠は稀ですが、生命を脅かす合併症を引き起こす可能性があります。1978年LarsenとSolomonに最初に報告されました。メカニズムはわかっていませんが、帝王切開瘢痕部妊娠のリスク因子に体外受精が含まれています。
現在までの帝王切開瘢痕妊娠の発生率は下記とされています。
- 1:2216 (異所性妊娠の6.1%)
Seow KM, et al. Ultrasound Obstet Gynecol. 2004;23:247–53. - 1:1800
Jurkovic D, et al.Ultrasound Obstet Gynecol. 2003;21:220–7. - 1:1688 (12/20256)
子宮内妊娠と帝王切開瘢痕部妊娠を共に認めた症例は1:3376 (6/20256)
Yan Ouyang, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2015 Nov 21;13:126.
≪私見≫
異所性妊娠は胚移植時には避けられ得る合併症のような印象をもっていたのですが、数多く行うにつれ、一定頻度で起こることを経験しています。異所性妊娠既往があり、異所性妊娠の部位を温存した患者様の場合、再度異所性妊娠を起こす頻度が高くなるため、最初の治療計画時にリスクが低い方法を選択していくようにしています。
文責:川井清考(院長)
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