妊娠によい食事(アメリカでの推奨2022)

アメリカの農林水産省と厚生労働省が共同で行ったプロジェクトの内容です。
日本とは少し状況が異なるとは思いますが、食生活が欧米化している日本でも当てはまる箇所は数多くあると思います。国内での推奨は過去のブログ(妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針(令和3年版)妊娠している女性の魚介類摂取について(厚生労働省のパンフレット))でとりあげさせていただいています。ほぼ同じ内容ですが、少し切り口が異なるので共に参考にしていただければ嬉しく思います。

Marshall NE, et al. Am J Obstet Gynecol. 2022 May;226(5):607-632. doi: 10.1016/j.ajog.2021.12.035.

ほとんどの女性が、妊娠前および妊娠中の健康的な栄養と体重に関する推奨事項を満たしていません。加工食品の代わりに、果物、野菜、豆類、全粒穀物、オメガ3脂肪酸を含む健康的な脂肪、ナッツや種子、魚などを基本にした食生活を送ることが必要とされています。これをしっかり摂ることで、加工食品、脂肪分の多い赤身肉、砂糖含有の高い食品や飲料の摂取量する機会がへると考えられています。
栄養が不十分な女性に対する総合的な栄養補給は、低出生体重児が減少するなど周産期予後を改善します。エネルギー産生栄養素ともいわれる3大栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質)を極端に制限する食事、特に炭水化物が不足するケトジェニックダイエット、乳製品を制限するパレオダイエット、および飽和脂肪酸を過剰摂取する食事法は避けるべきとされています。
最近のエビデンスによると、標準体重の女性では妊娠中の体重増加が周産期予後を予測しますが、妊娠前肥満女性では妊娠中の体重増加よりも妊娠前体重が周産期予後と関連することがわかっています。やせと妊娠中の体重増加不良(妊娠初期)も周産期予後を悪化させます。母親の周産期合併症の観点からだけではなく、生まれてくる胎児への影響も考えると妊娠前からの健康的な食生活が重要とされています。

妊娠中の女性、乳幼児、および幼児にとって公衆衛生上重要な食事関連のテーマについて、一連のシステマティックレビューを実施しました。妊娠中の食事パターンと妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病(GDM)、分娩週数、出生時体重などに焦点をあて、1980年1月から2017年1月に発表された246 文献を参考とし推奨を構築しました。NESのウェブサイト(https://nesr.usda.gov/pregnancy-technical-expert-collaborative-0)で閲覧可能ですが、要約のみ記載させていただきます。

妊娠高血圧症候群(白人データ)
・妊娠前および妊娠中の食事パターンには、野菜、果物、全粒穀物、ナッツ類、豆類、魚類、植物油を多く摂り、肉類および白いパンや白米など精製穀物を減らす食生活が妊娠高血圧症候群(妊娠高血圧腎症、妊娠高血圧症候群を含む)のリスク低減と関連しています。 (グレード:限定的)
・食事パターンや社会的地位などの患者背景との関連は不明な点が多く結論がでていません。(評価不能)
妊娠性糖尿病(白人データ)
・野菜、果物、全粒穀物、ナッツ類、豆類、魚が多く、赤身肉や加工肉が少ない食事が妊娠糖尿病のリスクを軽減することがわかっています。 (グレード:限定的)
・妊娠中の食事パターンと妊娠糖尿病の関連は不明な点が多く結論がでていません。(評価不能)
分娩週数(白人データ)
・野菜、果物、全粒穀物、ナッツ類、豆類、シード、魚介類を多く摂り、赤身肉、加工肉、揚げ物の摂取を減らすことで早産リスクが軽減する可能性があります。
(グレード:限定的)
妊娠前の食事パターンとの関連は不明な点が多く結論がでていません。(評価不能)
出生時体重
・結論がでていません。

文責:川井清考(院長)

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