流産後絨毛遺残があると慢性子宮内膜炎リスクは高い?(論文紹介)

流産後は一定期間あけないと妊娠率が低くなることがわかっています。もちろん、ホルモン環境などの部分も大事かと思いますが、子宮内膜環境が整うことも大事だと思っています。流産後絨毛遺残があると慢性子宮内膜炎リスクは高い報告をご紹介させていただきます。先日ブログでも紹介させていただいた研究(子宮内病変がある慢性子宮内膜炎には手術)と同一見解ですので、一定のコンセンサスが得られた内容だと思っています。

≪ポイント≫

  • 絨毛遺残と慢性子宮内膜炎は関連します。
  • 子宮鏡下絨毛遺残切除術時には慢性子宮内膜炎のルールアウトを推奨します。
  • 絨毛遺残の慢性子宮内膜炎治療には切除のみで有効か抗生剤治療が追加で必要かは更なる研究が必要です。

≪論文紹介≫

Dana B McQueen, et al. J Obstet Gynaecol. 2022 Aug 3;1-5.  doi: 10.1080/01443615.2022.2100693.
流産後絨毛遺残(RPT: retained pregnancy tissue)がある患者50名と、反復流産既往のある女性50名で慢性子宮内膜炎の有病率を比較した単一生殖医療施設でのコホート研究です。流産後絨毛遺残に対して子宮鏡下切除を実施した女性を対象としました。子宮内膜組織は、HE染色とCD138免疫染色で慢性子宮内膜炎の診断としました。
結果:
慢性子宮内膜炎の有病率は、流産後絨毛遺残群で原因不明反復流産既往群より有意に高くなりました(62% vs.30%)。多変量回帰では、流産後絨毛遺残群で慢性子宮内膜炎のオッズが有意に高くなりました(aOR 7.3, 95%CI 2.1-25.5)。

≪私見≫

反復流産患者でも、流産後絨毛遺残群でも慢性子宮内膜炎リスクが上昇します。ただ、通常の流産後は慢性子宮内膜炎の有病率はどうなんでしょうか。当院の成績をみていくと、流産術後の胚移植成績が安定するまで3ヶ月以上かかります。慢性子宮内膜炎が、流産後期間と妊娠率と関係しているのでは?と臨床的研究の観点からは興味があります。

文責:川井清考(院長)

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