慢性子宮内膜炎の診断基準はCD138免疫染色だけで大丈夫?(論文紹介)

慢性子宮内膜炎の診断基準について、どこまで治療するかは難しいと思っています。原因も多岐に渡りますしし、形質細胞は1-4個/HPFの場合 診断の偽陽性である可能性もありますので、抗生剤の乱用防止の観点からも治療を強く推奨しないことも多々あります。保険適用になり、混合診療が認められないと考えると、どの段階で慢性子宮内膜炎の検査を実施、治療を行うかなど判断が難しくなってきています。
ただし検査を実施するなら、解釈はしっかりするべきだと思います。よくCD138数だけを書いている報告書も見ますが、本当にそれだけでいいのでしょうか。
こちらについて、記載された報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

CD138免疫染色1個以上を慢性子宮内膜炎の診断基準とすると偽陽性の割合が高いため、CD138免疫染色1個以上であり子宮内膜間質変化を伴う場合を慢性子宮内膜炎と定義することを推奨しています。この定義にしたがっても反復流産女性では慢性子宮内膜炎の有病率が高く、関連が示唆されます。

≪論文紹介≫

Dana B McQueen, et al.Fertil Steril. 2021 Sep;116(3):855-861.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.04.036. 

単一生殖医療施設で実施された前向きコホート研究です。2016年2月から2018年12月に原因不明の2回以上の流産既往のある女性(TSH 4mU/L未満、抗リン脂質抗体陰性、子宮解剖学的に正常)と、研究目的のみの子宮内膜検査を同意したボランティア群で慢性子宮内膜炎の有病率を比較検討いたしました。
慢性子宮内膜炎診断のために子宮内膜組織をHE染色およびCD138免疫染色を実施しました。10HPFあたりの形質細胞数と子宮内膜間質性変化の有無を記録しました。
結果:
原因不明の反復流産既往女性群50人とコントロール女性26人の子宮内膜組織を評価し、慢性子宮内膜炎診断基準を10HPFあたり1個以上の形質細胞の存在と定義すると、コントロール群の31%、反復流産既往群の56%が基準を満たしました。子宮内膜間質の変化と形質細胞の両方が慢性子宮内膜炎の診断に必要とした場合、基準を満たした症例はコントロール群では存在せず、反復流産既往群で30%でした。

≪私見≫

亀田IVFクリニック幕張では、慢性子宮内膜炎の定義をどうしようかと考えたときにDana B McQueenが2015年の同雑誌に報告した定義を参考にしてきました。
Score2以上は積極的治療対象としていましたが、score1の場合にどうしようかと悩むことがありましたので、最近では子宮内膜間質変化や子宮鏡所見を参考に治療対象とするかどうか患者様と相談するようにしています。

参考:Dana B McQueen, et al. Fertil Steril. 2015 Oct;104(4):927-931.
慢性子宮内膜炎の定義:
score 0 = none, <1/HPF(×40)
score 1= 1–5/HPF or clusters of <20 cells
score 2 = 6–20/HPF or clusters of ≥20 cells
score 3 = >20/HPF or sheets of cells.

文責:川井清考(院長)

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