国内施設からの異常受精胚(2.1PN胚)の生殖医療結果(論文紹介)
異常受精胚(abnormally fertilised oocytes (AFO胚))由来で胚盤胞に至った胚を移植するかどうかは非常に難しいと考えています。過去のブログ(異常受精胚(1PN、2.1PN胚の取扱)(論文紹介))にもとりあげていますが、3PN胚は移植をしないことが前提であり、それ以外の0PN、1PN、2.1PN胚は患者様に説明のうえ、移植されることもあります。(異常受精胚の取扱のディスカッション(2021年 ESHRE)
今回、国内施設からの2.1PN胚の生殖医療結果をご紹介させていただきます。
≪ポイント≫
過去の報告では2.1PN胚で正常核型胚が得られ、出産に至った報告がありますが、今回の報告(国内施設の2.1PN 15個)では胚盤胞到達は悪くなかったが大部分は異数体であり、胚移植に使用することはできませんでした。
≪論文紹介≫
Hiromi Takahashi, et al. Reprod Med Biol. 2022. DOI: 10.1002/rmb2.12462.
2020年11月から2021年7月まで体外受精(ICSI)を実施した695名を対象に後方視的研究です。2.1PN胚と2PN胚について胚盤胞形成率を比較し、2.1PN胚から得られた胚盤胞15個についてPGT-A分析を行いました。
卵巣刺激をおこなってhCG投与後35.5 時間で採卵を行い、39.5時間後にICSIを行なっています。受精確認はICSI 16~18時間後(Day1)に行なっています。受精確認時に、2PB3PNのPN径を測定し、正常なPNが2つ、さらに正常の1/3以下の大きさの小さなPNを呈する接合体を2.1PNと定義しています。
結果:
26名女性28周期から32個の2.1PN胚(成熟卵あたり0.4%)が得られました。
胚盤胞形成率は2.1PN胚(43.8%)と2PN胚(54.8%、p=0.212)で同等でした。また、2.1PN胚と2PN胚の良好胚盤胞率は、それぞれ18.8%、25.5%であり、有意差は認めませんでした(p = 0.383)。胚盤胞15個はすべてdiploidでしたが、13個が異数体であり2個(30歳および32歳)がモザイクでした。
≪私見≫
2.1PN胚形成のメカニズムはまだ完全に解明されていません。今回の報告ではタイムラプス動画をみて解析しており、追加の小型PNは女性由来PNよりも遅れて形成され、男性由来PNに向かう前に必ず第2極体直下で発生することを確認しています。2PN胚と2.1PN胚では、男性由来PNの大きさに差はありませんが、女性由来PNは2PNより2.1PNの方が小さい傾向があったとディスカッションで触れられています。
ただし、ヒトではPNが女性由来か男性由来かを区別することが難しいため、小型PNが女性・男性どちらに由来するか、避けられるものなのかは、更なる研究が必要だと思います。
文責:川井清考(院長)
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