卵巣刺激高反応者(PCOS)にはfixed GnRH antagonist法はどう?(論文紹介)

卵巣刺激高反応者の GnRH antagonist法にはfixed法とflexible法どっちがよいの?という観点から、昨日のブログでPCOS以外の卵巣刺激高反応者ではfixed法で十分という報告をご紹介しました(卵巣刺激高反応者(PCOS以外)にはfixed GnRH antagonist法はどう?(論文紹介))。では、PCOSである卵巣刺激高反応者でのfixed GnRH antagonist法がどうかを調べたRCTをご紹介いたします。

≪ポイント≫

PCOS女性にはGnRH antagonist法はfixed法よりflexible法のほうが回収卵子数、成熟卵数、受精数、有効胚数の観点から有利そうである。

≪論文紹介≫

Hossein Rashidi B, et al. J Family Reprod Health. 2015. PMID: 26622314

2012年12月から2013年9月まで体外受精を実施する100名のPCOS女性(20-40歳のロッテルダム基準を満たした女性)を対象に実施した無作為化臨床試験です。
rFSH (ゴナールエフ®)150IU 4日間固定投与し、その後に介入を行いました。
Fixed法では5日目からHCG投与日まで、flexible法では発育卵胞径14mmに達した日からHCG投与日までGnRH antagonist(セトロタイド)を連日投与し、少なくとも3つの発育卵胞径17mm以上になった日に10,000IU hCGにてトリガーを実施しました。主要評価項目として採卵時の成熟卵子数、発育胚数、凍結胚数、副次評価項目として刺激期間、ゴナドトロピン使用量、アンタゴニスト使用期間を評価しました
結果:
採卵回収卵子数(14.75 ± 7.9個 vs. 6.9 ± 3.3個; p < 0. 01)、採卵時の成熟卵子数(11.3 ± 6.1個vs. 4.5 ± 2.5個; p < 0.01) 、正常受精数(8.4 ± 5.1個 vs. 4.25 ± 2.3個; p < 0.01) 、凍結胚数(9.2 ± 4.55個 vs. 1.6 ± 2.4個; p < 0.01)はflexible法の方が多い傾向にありましたが、平均刺激期間(9.6 ± 2.3日vs. 10.5 ± 1.2日; p = 0.05 )、アンタゴニスト使用期間(3.8 ± 1.5日vs. 4.7 ± 3.2日; p > 0.05 )、未熟卵数(1.26 ± 1.98個 vs. 1.3±1.1個; p> 0.05 )、胚盤胞数(1. 8 ± 2.4個 vs. 1.5 ± 1.2個; p > 0.05), 変性卵子数 (0.5 ± 1.1個 vs. 0.12 ± 0.4; p > 0.05)にも差がなく、移植あたりの生化学妊娠、臨床的妊娠、流産率にも差がありませんでした。

≪私見≫

卵巣刺激高反応者には回収卵子数の観点から、PCOSのような排卵障害がある女性にはflexible法、排卵障害がない女性にはfixed法が至適回収卵子数、受精卵子数、有効胚数の観点からはよいのかもしれません。
発育卵胞が増える前からのアンタゴニスト投与は成熟卵子数を減らすことが新しい知見として勉強になりました。

文責:川井清考(院長)

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